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政府内、同盟諸国との対立で深まる苦悩

 元米中央情報局(CIA)職員エドワード・スノーデン容疑者が漏洩したトップシークレットの数々。米国と主要同盟国ドイツなどとの深刻な対立に加えて、政府内の責任のなすりつけ合いも表面化し、オバマ米大統領の苦悩が深まっている。

 過去に、同じように米政権を揺るがした事件に、1974年に表面化した「ファミリー・ジュエル」事件がある。英語の文字通りだと「家宝」だが、実際の意味は「お家の恥辱」だ。

 CIAが発足から25年間にわたって行った驚くべき違法行為、秘密工作の数々がニューヨーク・タイムズ紙のスクープと議会調査で明らかにされた。キューバのカストロ首相やコンゴのルムンバ首相らに対するCIAの暗殺工作が白日の下にさらされたのだ。

 当時のフォード大統領は「外国首脳の暗殺禁止令」を出すなどして切り抜けた。ニクソン大統領辞任後、フォード氏は大統領に就いたばかりで、責任追及が甘かったこともあるだろう。

 今度は、ジェームズ・クラッパー国家情報長官(DNI)が議会証言で「米国民監視の事実はない」と失言するなど失態が目立っており、オバマ大統領はいずれDNIを更迭するとみられる。しかし、それでも危機を回避できるかどうか明らかではないのだ。

UKUSA協定の改革は必至

 今度の事件で、メルケル・ドイツ首相が提案しているのは、米独間の「スパイ相互禁止協定」とも言える現実的な対応だ。英国と米国は戦時中、日独伊枢軸国の暗号解読と信号情報(SIGINT)を共有する「BRUSA協定」を締結。戦後は「UKUSA協定」に衣替えし、これにカナダ、オーストラリア、ニュージーランドも加わった。これら5カ国は「ファイブ・アイズ」とも呼ばれている。スノーデン容疑者が暴露した機密文書から、今もファイブ・アイズは緊密な協力関係にあることが証拠立てられた。

 メルケル首相が主張しているのは、ドイツもこれら5カ国の同様に、「相互にスパイ行為をしない」ことを約束する協定を結ぶ、というものだ。先週、ドイツ政府情報当局高官らからなる代表団が訪米し、オバマ政権側と協議したが、ドイツ週刊誌「シュピーゲル」によると、米側とは実質協議ができなかったようだ。

 恐らく、オバマ政権内では議論が煮詰まっていない可能性が大きい。ドイツとこうした協定を結べば、他の同盟諸国の中からも同様の提案が出てくる可能性があり、現状では結論が出せない状況にあるとみられる。

 いずれにしても、UKUSA協定を現状のままで維持することは早晩困難になると予想される。

オバマ大統領の指示があったのか

 スノーデン容疑者による暴露で、米政府内の対立が激化している。

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筆者

春名幹男

春名幹男(はるな・みきお) 早稲田大学客員教授(米政治安保、インテリジェンス)

1946年京都市生まれ。大阪外国語大学卒。共同通信社ニューヨーク支局、ワシントン支局、ワシントン支局長。名古屋大学大学院国際言語文化研究科教授をへて、現在、早稲田大学客員教授。ボーン・上田記念国際記者賞・日本記者クラブ賞受賞。著書に『ヒバクシャ・イン・USA』(岩波新書)、『秘密のファイル―CIAの対日工作』(共同通信社)など。

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