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「国安委」は中国版NSCか?

藤原秀人 フリージャーナリスト

 中国共産党の重要会議である第18期中央委員会第3回全体会議(3中全会)が11月9日から12日まで北京で開かれた。その会場は、人民解放軍総参謀部に属する京西賓館だった。

 10月28日に四輪駆動車が突入を試み炎上した天安門前から、北京のメーンストリート長安街を西に7、8キロ行ったところに京西賓館がある。改革開放の方針を決めた1978年の第11期3中全会をはじめ全国人民代表大会(議会)の予備会議など、数々の重要会議が開かれてきた「5星級」のホテルである。

3中全会の期間、多数の警察官や武装警察官が警戒した天安門前=2013年11月9日3中全会の期間は、天安門前を多数の警察官や武装警察官が警戒した=2013年11月9日
 ホテルだが、普通の市民や外国人は宿泊どころか近づくことも許されない。全国人民代表大会や党大会が開かれる人民大会堂や、国賓をもてなす釣魚台国賓館が外国人にも開放されているのに、ここは武装警察部隊が常時警備し、警察車両も付近をずっとパトロールしている厳戒スポットだ。

 習近平・党総書記ら中央委員204人、中央委員候補169人が出席した3中全会の期間中、京西賓館の警備はさらに厳重になった。天安門前突入事件の後にも11月6日には山西省党委員会ビル周辺で連続爆発事件が起きている。警備が厳しくなるのは当然だろうが、見えない敵におびえているようでもあった。

 軍直轄のホテルで開かれた会議では、改革を徹底するため「全面深化改革指導小組」を設けることが決まった。この決定は経済問題を主に討議する3中全会なので驚くことはないが、内外で大きな反響を呼んだのが「国家安全委員会」(国安委)を創設するという決定だった。

 ついに中国にも米国の国家安全保障会議(National Security Council)のような組織ができるのか。日本で国家安全保障会議(日本版NSC)の設立が目前に迫っているのに影響されたのだろう。様々な臆測が出ている。

 3中全会閉会後に発表されたコミュニケによると、「社会統治の刷新では、最も広範な人民の根本的利益の擁護に着目し、調和の要素を最大限に増やし、社会発展の活力を増強し、社会統治のレベルを高め、国家の安全を守らなければならない。そして人民が安心して暮らし生業に励み、社会が安定し秩序が保たれるようにしなければならない。社会統治の方法を改善し、社会組織の活力をほとばしらせ、社会の矛盾を効果的に予防、解消するための体制を刷新し、公共の安全システムを整えるべきだ」。こう指摘したうえで「国家安全委員会を設立し、国の安全保障体制と安全保障戦略をより完全にし、国家の安全を確保すべきだ」としている。

 素直に読めば、国安委が想定しているのは、最近頻発している暴動やテロなど社会の安定を揺るがす問題のようだ。国営通信社新華社が配信したコミュニケの英文は、国安委を「National Security Council」ではなく、「State Security Committee」と訳している。

 11月13日の中国外務省定例記者会見で、日本人記者が国家安全委員会の設立理由をたずねたうえで、「日本も『日本版国安会』を設立するためという見方がある」と指摘した。すると、秦剛報道局長は「国の安全保障体制と安全保障戦略を整え、国の安全を確保するためだ」と答えたうえで、「あなたの質問の後半は私にわなを仕掛けたもののようだ」「この質問は

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