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自衛隊、水陸両用作戦能力の実力――米海兵隊幹部に聞く

谷田邦一 朝日新聞専門記者(防衛問題担当)

「水陸両用作戦能力をもっていたら、3・11の津波で3千~4千人の人々を救出できただろう」

 安倍政権のもとで、日本の安全保障政策の基本指針「防衛計画の大綱」が策定された。1976年に初めて策定されて以来、5つめとなる今回の防衛大綱の中心テーマは、急ピッチで増強を進める中国の軍事力をいかに抑止するかにある。これまでの日本の防衛力にはなかったコンセプトとして、「水陸両用作戦能力」と呼ばれる新しい作戦能力が自衛隊に採り入れられるのが特徴といえる。

 水陸両用作戦能力(amphibious warfare capabilities)とは、敵の支配下にある陸上部などに、海岸部から艦艇や航空機、車両などを使って部隊を展開させる軍事作戦能力のことだ。大規模災害で軍隊が行う人道支援活動などにも用いられることがある。

 各国では海兵隊や海軍陸戦隊などが担う機能だが、歴史的によく知られている第2次世界大戦のノルマンディー上陸作戦やガダルカナル上陸作戦、朝鮮戦争の仁川上陸作戦などでは、「殴り込み部隊」としての攻勢的なイメージが強い。そのため、専守防衛を旨とする日本の自衛隊には、敢えてそうした機能はもたせないできた経緯がある。

 ところが、中国が近年、尖閣諸島付近で頻繁に領海侵入したり、特異な防空識別圏を設定したりするようになり、離島防衛に備える必要が高まってきた。こうした情勢の変化を受け、防衛大綱では、中国を念頭に「島嶼部への侵攻があった場合に速やかに上陸・奪回・確保する」として「水陸機動団」を設けたり、米海兵隊がもっている水陸両用車や新型輸送機オスプレイを導入したりすることが決まった。

 防衛大綱に水陸両用作戦能力の保有が書き込まれたのは今回が初めてだが、実は2011年の東日本大震災をきっかけに、防衛省・自衛隊はすでにそうした能力の習得が必要であると痛感していた。津波に流された被害者の救助活動や、海中のガレキで接近できない沿岸部での救援活動では、必ずしも十分な能力を発揮できなかったからだ。

 「トモダチ作戦」で出動した米海兵隊や米海軍が、水陸両用作戦の機材やノウハウを使って次々と見事な救出・救援劇を繰り広げるのを、彼らは黙って見ているしかなかった。

 これをきっかけに、自衛隊は日本に駐留する米海兵隊の指導のもとで、ここ2年ほどの間、一部の部隊がそのノウハウを学んできた。

 水陸両用作戦能力を自衛隊に付与する役目を担ったのが、ハワイに司令部をおく米太平洋海兵隊の連絡幹部として陸上自衛隊に派遣されていたグラント・ニューシャム大佐(57)=9月末退任=だった。米国の在日大使館での勤務経験もあるエリートで、東日本大震災の直後に仙台市にある陸自仙台駐屯地に派遣され、米海兵隊の責任者として日本側との調整を担当。その後、連絡幹部として主に陸海両自衛隊に対する水陸両用作戦能力の指導などにあたってきた。

ニューシャム元米海兵隊大佐拡大ニューシャム元米海兵隊大佐
 社会部の同僚の田井中雅人記者と一緒に、ニューシャム大佐に自衛隊の能力をどう評価しているかインタビューした。

 最も印象的だったのは、もし自衛隊が米海兵隊と同じように水陸両用作戦能力をもっていたら、「津波の直後に ・・・続きを読む
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筆者

谷田邦一

谷田邦一(たにだ・くにいち) 朝日新聞専門記者(防衛問題担当)

1959年生まれ。1990年、朝日新聞社入社。社会部、那覇支局、論説委員、編集委員、長崎総局長などを経て2013年4月から社会部専門記者(防衛問題担当)。主要国の防衛政策から最新兵器、軍用技術まで軍事全般に関心がある。防衛大学校と防衛研究所で習得した専門知識が、現実の紛争地でどのくらい役立つのか検証取材するのが夢。

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