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ペルシア語でイランに語りかけるべき

高橋和夫 放送大学教養学部教授(国際政治)

 イランとアメリカを含む諸大国間の核問題での暫定合意は、2012年末の明るいニュースであった。この暫定合意の背景には、アメリカからのイランの官民への様々な働きかけがあった。オバマ大統領が毎年送り続けたイラン暦の新年のビデオ・メッセージ、ハメネイ最高指導者への書簡、そしてクリントン前国務長官名のペルシア語のツイッターなどである。

 そうした努力の一つに、2011年4月のペルシア語報道官のポストの創設がある。ペルシア語はイランの共通語である。国務省にはペルシア語以外にもアラビア語やヒンズー語などの報道官のポストが存在した。しかし、英語以外の言語の報道官が、注目されることはなかった。その存在さえ知られていなかった。

 ところがペルシア語の報道官ポストの新設は、イラン・アメリカ関係が微妙な時期であっただけに脚光を浴びた。初代のペルシア語報道官をアラン・エア(Alan Eyre)という外交官が務めている。このポストの前には、ドバイのアメリカ領事館でイランを担当していた人物である。よくわかる文法的に正しいペルシア語を操る人物である。しかし、もちろんアメリカ英語訛りのペルシア語である。

 アメリカには100万人単位でイランからの移民・難民その子孫が生活している。その気になればイラン人と同じように訛りのないペルシア語を話すイラン系アメリカ人を探すには不自由しない。

 にもかかわらず国務省が、英語訛りの残るペルシア語の使い手を選んだのは、なぜだろうか。イラン系アメリカ人がイラン人のようにペルシア語を喋っては、「本当のアメリカ人」が自分たちに向けて語りかけているとの感覚をイラン国民は受けないだろう、と国務省は考えたのか。

 ペルシア語で直接にイラン人に語りかけるという面から見ると、ロシアの中東専門家がBBCのペルシア語のテレビ放送でインタビューに答える場面もよく目にする。ロシア語訛りは残るものの流暢なペルシア語である。こうした例のように、イラン人に対して英語やロシア語ではなく直接にペルシア語で語りかける方が、はるかに強い説得力を持つだろう。

 イランに語りかけるという面では、アメリカは「アメリカの声」(Voice of America)のペルシア語放送という独自のメディアを持っている。アメリカは一日24時間、イランに向けてペルシア語で話しかけている。イギリスも、BBCのペルシア語放送という、現地では視聴者の多い放送局を持っている。アメリカやイギリスはペルシア語で発信を続けている。ロシアやドイツやフランスも中東へ語りかけようと努力している。

 日本の隣国の中国も、長年にわたり中東へ熱心に語りかけている。これは ・・・ログインして読む
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筆者

高橋和夫

高橋和夫(たかはし・かずお) 放送大学教養学部教授(国際政治)

北九州市出身、放送大学教養学部教授(中東研究、国際政治)。1974年、大阪外国語大学ペルシャ語科卒。1976年、米コロンビア大学大学院国際関係論修士課程修了。クウェート大学客員研究員などを経て現職。著書に『アラブとイスラエル』(講談社)、『現代の国際政治』(放送大学教育振興会)、『アメリカとパレスチナ問題』(角川書店)など多数。ツイッター https://twitter.com/kazuotakahashi ブログhttp://ameblo.jp/t-kazuo 

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