2014年01月11日
中国の故事にあるとても有名な話。
昔、楚の国に矛(ほこ)と盾(たて)を売る商人がいた。商人いわく「この矛はどんな盾をも貫くことができる。さらに、こちらの盾はどんな矛もはね返すことができる」。それを聞いていた人が「では、その矛でその盾を突いたならばどうなるのですか」と問うと、その商人が返答に窮してしまったという。よく知られる「矛盾」ということばの語源だ。
よくもまあ抜けぬけとそんなことが公言できたものだと思う。中国の楚の国の商人の方がよほど正直だ。なぜならば商人の方は返答に窮して沈黙したのだから。
12月27日の記者会見の席上で知事の発言の論理の整合性を質すと、知事はきわめてエキセントリックに反応した。何かひどく悲しいものをみてしまったような暗鬱たる気分に陥った。これが沖縄県のガバナーなのか、この人物が140万沖縄県民を代表しているのか、と。
だが県民の方には、彼を代表とは思っていない人々もたくさんいた。記者会見と並行して同じ時刻に、沖縄県庁のエントランス・ロビーに、県の埋め立て申請承認に怒った多数の県民らがなだれ込んで座り込みをしていた。
厳重な警備体制が敷かれていた。不測の事態でも恐れたのだろうか。知事の両脇には高良倉吉、川上好久の両副知事がいた。彼らの乗った黒塗りの公用車は会見後に公舎から退出する際、抗議する市民らに取り囲まれて激しい罵声を浴び一時立ち往生していた。
市民らは警察官によって力で排除されていた。彼らはその光景を車の後部座席からどのような気持ちで見ていたのだろう。
会見の席で知事が着ていたのは、今では礼服としても通用している「かりゆしウェア」だった。立派な仕立てのものだった。だが、この「かりゆしウェア」
有料会員の方はログインページに進み、デジタル版のIDとパスワードでログインしてください
一部の記事は有料会員以外の方もログインせずに全文を閲覧できます。
ご利用方法はアーカイブトップでご確認ください
朝日新聞社の言論サイトRe:Ron(リロン)もご覧ください