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オスプレイはいっそのこと、政府専用機に

清谷信一 軍事ジャーナリスト

 米陸軍は輸送機オスプレイを導入していない(空軍、海兵隊が導入)。米陸軍航空隊の元高官によると、米陸軍がオスプレイを導入しなかったのはその飛行特性にある。

 オスプレイは着陸に際してかなり遠方から高度を落としつつ、固定翼モードからヘリモードに切り替える必要がある。しかもヘリモードでは通常のヘリコプターのような急激な空中機動ができない。これが最大の理由だという。それはオスプレイのローターが通常のヘリに比べて短いからだ。この点は筆者も過去に指摘したところだ。

 つまり強襲ヘリボーン作戦のように、地上に敵が布陣して対空兵器を使用してくるような場合や戦闘救難に使用すると、回避行動が出来ずに撃墜される確率が高くなる。加えて米軍向けでも80~100億円という調達価格は、多目的軍用ヘリコプターUH-60などの数倍となる。

 米空軍の場合、特殊作戦型のCV-22型を採用しているが、特殊作戦では隠密行動が基本であり、基本的には強襲は考えられていない。ゆえに筆者も陸自で使用するならば特殊作戦用を提案してきた。

 確かにオスプレイは通常のヘリに比べて、高速で航続距離も長い。固定翼機には出来ない垂直離着陸機能も有している。つまりヘリと固定翼機のいいところ取りがセールスポイントだ。

 だがこれは、裏を返せばヘリのような器用な空中機動ができず、速度では固定翼機にはかなわない(輸送機C-130Jの巡航速度が時速634キロに対して、オスプレイは時速443キロに過ぎない)ということだ。

 またヘリモードでの離着陸の場合、エンジンナセルから極めて高温の排気ガスが出るので、ヘリに比べて危険で、艦艇に着艦する場合は耐熱処理をした飛行甲板を持ったフネでしか運用できない。

 例えば海自ではひゅうが級DDHや、最新型のいずも級DDHでは運用が可能だが、おおすみ級の輸送艦では使用できないのである。またオスプレイを救難機と使用する場合には、この高温の排熱と、ホバリング時の安定性がヘリより劣ることで救難活動に支障がないかどうか検証する必要がある。

 本来オスプレイを採用するのであれば、先述のように試験と検討を十分に行うことはもちろん、それに加えて3自衛隊で何機ほど、どう調達するのか、総合的な調達数も考えておくべきだ。つまり総合的なオスプレイの調達予算と運用コストを考える必要がある。

 オスプレイの整備・運用コストはヘリに比べて高価であり、ヘリに替えてオスプレイを採用するときに、その長年の運用コストに耐えられるかどうかを検証しておく必要がある。

 すでに防衛省の予算では、装備の維持修理費の金額が装備調達費の金額を追い抜いて久しい。このような現状からも運用コストの管理は必要だ。

 また国内で整備施設を作るか否かで稼働率も運用コストも変わってくる。一定以上の機数を採用するのであれば、ボーイング社あるいは国内企業に対して国内で機体を整備する施設を作らせることもできよう。

 その場合は米軍のオスプレイも整備することで、運用コストの削減と米軍機整備のカネが国内に落ちることが期待できる。実際に在日米海軍の対潜哨戒機P-3Cなどは日本国内で整備されている。

 また政府や防衛省内では、オスプレイ調達に際して一部機体製造に関わることも検討されているようだ。つまり採用の見返りに一定パーセンテージのパーツやコンポーネントを日本で生産するというものだ。このような交渉をする場合でも採用予定機が多ければ多いほど有利な条件を引き出すことができる。

 これまで検証した結果に鑑みれば、筆者はやはり入念に試験と検討をしたうえで、当初はごく少数のオスプレイを導入すべきだと考える。

 その際の妙案としては、政府専用機としての採用が挙げられる。現在陸自では首相や天皇陛下

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筆者

清谷信一

清谷信一(きよたに・しんいち) 軍事ジャーナリスト

軍事ジャーナリスト、作家。1962年生まれ。東海大学工学部卒業。03~08年まで英国の軍事誌Jane's Defence Weekly日本特派員。香港を拠点とするカナダの民間軍事研究機関、Kanwa Informtion Center上級顧問。日本ペンクラブ会員。著書に『専守防衛─日本を支配する幻想』『防衛破綻―「ガラパゴス化」する自衛隊装備』『自衛隊、そして日本の非常識』『ル・オタク フランスおたく物語』、共著に『軍事を知らずして平和を語るな』『アメリカの落日―「戦争と正義」の正体』『すぐわかる国防学』など。最新刊に『国防の死角――わが国は「有事」を想定しているか』。

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