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国産機銃は廃止すべきだ(下)――小火器メーカーの再編を

清谷信一 軍事ジャーナリスト

 7.62ミリNATO弾と異なる、装薬を減らした減装弾を自衛隊が使用することは他にも問題がある。同盟国たる米軍との互換性がないことだ。

 まったく互換性がないわけではないが、減装弾にあわせて調整した機銃にNATO弾を使用するとガス圧が異なり、うまく作動しない。その逆もそうだ。米軍の機銃に減装弾を使用すると作動不良を起こす。このため使用する際には銃を調整する必要がある。

 また、減装弾とNATO弾では弾道特性が違うので、銃が調整できてもターゲットに命中させるのは難しい。そもそも有事にそんな調整や訓練をしている暇などない。

 またPKOなどでも他国の軍隊と弾薬の融通ができない。実際2013年末、陸上自衛隊の南スーダン派遣部隊が、韓国軍に5.56ミリ弾を融通するという事態が発生した。特に安倍政権は「積極外交」を標榜しており、今後PKOなどでそのような機会が増えることが予想される。現状では自衛隊から弾薬を供与することは難しいが、自衛隊の部隊が他国から弾薬を供与されることもあるだろう。

 対してNATO弾を使用していれば米軍との相互互換性が確保できる。それだけではなく、NATO弾は広く世界中で使用されているので、有事には第三国から輸入し、使用することも可能だ。

 したがって、軍事的な整合性からいえば自衛隊は7.62ミリ減装弾をやめてNATO弾に変更すべきだ。

 何故自衛隊が7.62ミリ74式機銃に減装弾を使用しているかというと、89式の前の旧式の64式小銃がこの弾を使用していて、これとの互換性を確保する必要があるからだ。

 NATO弾は威力が強く、日本人に体型にあわせるために装薬量を減らした7.62ミリ減装弾が採用された。これは62年に採用された7.62ミリの62式から採用された。64式小銃も、その後74年に採用された74式機銃も弾薬の共用性を図るために減装弾が使用されてきたという経緯がある。

 ちなみに2002年度から調達されている陸自の7.62ミリの対人狙撃銃は7.62ミリNATO弾が輸入されている。また同じく陸自が近い将来導入する予定のヘリ用の7.62ミリのガトリングガンも輸入品の7.62ミリNATO弾が使用される予定だ。NATO弾を使用するのはこれらの火器は減装弾ではその性能が発揮できないからだ。つまり今後、減装弾とNATO弾の併用が本格化し、兵站の負担が増える。その負担を減らすためにも7.62ミリ機銃のNATO弾化は必要不可欠だ。

 それができない理由は、未だに旧式化した64式小銃の更新が終わっていないからだ。64式小銃が廃止されていれば減装弾を使用し続ける意味は少ない。

 だが64式小銃の後継である89式の調達が開始されてから四半世紀がたとうというのに、未だに更新が完了せず、2種類の小銃を使用している。ちなみに62式機銃の後継であるMINIMIも91年度より採用され22年が過ぎているが、いまだに62式機銃との交代は終了していない。

 四半世紀近くも新旧小火器の更新が終わらないというのは世界の軍隊の常識からみて極めて異常である。

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筆者

清谷信一

清谷信一(きよたに・しんいち) 軍事ジャーナリスト

軍事ジャーナリスト、作家。1962年生まれ。東海大学工学部卒業。03~08年まで英国の軍事誌Jane's Defence Weekly日本特派員。香港を拠点とするカナダの民間軍事研究機関、Kanwa Informtion Center上級顧問。日本ペンクラブ会員。著書に『専守防衛─日本を支配する幻想』『防衛破綻―「ガラパゴス化」する自衛隊装備』『自衛隊、そして日本の非常識』『ル・オタク フランスおたく物語』、共著に『軍事を知らずして平和を語るな』『アメリカの落日―「戦争と正義」の正体』『すぐわかる国防学』など。最新刊に『国防の死角――わが国は「有事」を想定しているか』。

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