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原発問題はそれでも最大の争点だった――都知事選を終えて

白井聡 京都精華大学人文学部専任講師

 都知事選が終わった。大マスコミの予想通り、舛添要一候補が次点にダブルスコア以上の差をつけて勝利した。

 「原発問題は争点にならず」とTVをはじめとしたマスコミ各社は論評したが、何のことはない、マスコミが「争点にしなかった」のだから言葉遣いが間違っている。「私たちが原発問題を争点化させませんでした」と述べるのが正しいだろう。

 ネット上の選挙運動解禁後も、特にテレビ局が持つ争点設定の権力は依然として強大であることが、あらためて明らかになった。細川氏を全力支援した小泉純一郎元総理の慨嘆「街頭の反応と世論調査とどうしてこんなに違うのか」(小泉氏のツイッター・アカウントより)もむべなるかなである。

 印象論だが、TV各局は、原発問題の争点化を避けるかたちで都知事選を報じたというよりも、都知事選そのものがあたかも存在しないかのごとくに扱ったように感じられる。報道時間の総量が以前の選挙時と比べて格段に少なかったのではないか? その点、検証が待たれる。

 マスコミの問題とは別次元に、「原発問題は都政と関係ない、ゆえに争点化は不適切」という意見が目についた。率直に言って、驚きのあまり空いた口がふさがらない。

小泉純一郎氏の手書きのコメントを見せる細川護熙氏=2014年2月9日、東京都千代田区拡大小泉純一郎氏の手書きのコメントを見せる細川護熙氏=2014年2月9日、東京都千代田区
 いまさら言うまでもないが、福島県の原発は首都圏に向けて電力を送っていた。福島は電力を生産し、首都圏はそれを買っていた。そしてその挙句、3・11が起こり、数千数万の人々が家郷を失った。それは、私を含む首都圏住人の「お買いもの」の結果にほかならない。

 その意味で、われわれこそがこの事故を引き起こした。一体都民のどの口が「関係ない」と言えるのだろうか? 

 買い手がいてこそ商品は生産される。この事故を経てもなお、この壊滅的に不道徳なやり方で生産される商品をわれわれは買い続けるのか否か――これが原発問題の争点化によって突きつけられた選択であったはずだ。

 ましてや、投票率は50%未満。それは、すでに払われてしまった犠牲についても「どうでもいいや」という態度表明が有権者の半数からなされたことを意味する。ここに表れているのは、都市住民の倫理的破産以外の何物でもない。

 原発問題争点化に対する批判のもう一つのパターンは、「原子力政策は国政で争われるべき争点であり、地方選にはなじまない」という議論であった。一見もっともらしい。しかし、 ・・・ログインして読む
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筆者

白井聡

白井聡(しらい・さとし) 京都精華大学人文学部専任講師

1977年生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業、一橋大学大学院社会学研究科総合社会科学専攻博士後期課程単位修得退学。博士(社会学)。専攻は政治学・社会思想。著書に『永続敗戦論――戦後日本の核心』(太田出版)、『未完のレーニン――〈力〉の思想を読む』(講談社選書メチエ)、『「物質」の蜂起をめざして――レーニン、〈力〉の思想』(作品社)『国体論――菊と星条旗』(集英社新書)。共訳書に、スラヴォイ・ジジェク『イラク――ユートピアへの葬送』(河出書房新社)、監訳書にモイシェ・ポストン『時間・労働・支配――マルクス理論の新地平』(筑摩書房)。

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