木村元彦(ジャーナリスト)
2014年02月25日
ポン・ジュノの新作『スノー・ピアサー』は80年代のフランスのSFコミックが原作であった。地球に氷河期が訪れ、大陸間を絶え間なく走り続ける列車に乗り込んだ者だけが生き残ったという設定だ。
この現代のノアの箱舟に君臨する列車王ウィルフォードは自らを頂点としたヒエラルキーを全車内に確立させ秩序をコントロールする。前方車両に富裕層、後方車両には貧困層という極端な棲み分けがなされ、貧困層はすべて富裕層のために働かされる。
贅沢に寿司を食らい、エステやファッションを楽しむ支配者がいる一方で餌のような食物を供されて黙々とタコ部屋労働に耐える人々が居る。絶望的な格差を孕んで列車は走り続けるのだが、やがて後方車両から革命の火の手が上がる。
原作では登場人物のほとんどが欧米人だが、ポン・ジュノは『グエムル』で共演させたソン・ガンホとコ・アソンを再び親子役で起用、この韓国人俳優の存在はひと際目立ち、まさに韓国映画のパワーが世界に証明される格好となった。
しかし、そのことに触れるとポン・ジュノは言った。
「確かに彼らの才能が世界に認められることは嬉しい。しかし矛盾しているかもしれないが、あの作品においてはすべての登場人物の国籍や民族は意味が無いのです。ガンホもアソンも韓国人としてではなくただの下層民として描いたに過ぎません。あくまでも富裕層と貧困層、権力を持つものと持たざるもの、その格差の問題を扱っているのです。
ウォール街でデモが起こり、韓国でも中流層が崩壊して久しい。我々は資本主義の体制の中で生きていて、共産主義を標榜している中国ですら、成金がブランドを買い占めている。新自由主義の弊害については
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