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緊急措置効かぬ怪物スモッグが中国政府を打ちのめす

団藤保晴(ネット・ジャーナリスト)

 いざとなれば打つ手はあると中国政府は身構えていたのに、モンスター級の重篤スモッグは繰り出される緊急措置を悠然と払いのけた。丸6日も続いた大気汚染、下がるどころか尻上がり上昇のPM2.5濃度で面目丸つぶれ。人工衛星で見た今回スモッグの重篤部分は81万平方キロ。東京から博多まで直線で約900キロあり、これを一辺とした正方形面積に相当した。こんな膨大な空間に汚染物質が充満したら、小手先の対策は効かない。中国がエネルギーと資源の大浪費型経済成長に突き進んできたツケが噴き出している。

 まず北京の米国大使館が測定、公開している大気質指数「北京AQI」のグラフを騒ぎの発端になった2月20日から保存しておいたので、PM2.5とPM10の部分を切り出し6日分並べてご覧いただく。PM2.5は直径2.5マイクロメートル前後、PM10は直径10マイクロメートル前後の微粒子で、肺の奥深くまで侵入して一部は血流に乗るPM2.5の方がより危険視されている。PM2.5を基準に取ると、大気1立方メートル当たり250マイクログラム以上がAQI指数300以上の最上位ランク「厳重汚染」になっている。指数は500が最高で、それ以上は桁外れを意味する「爆表」と称される。ちなみに日本の環境基準は35マイクログラム。

 重篤スモッグ緊急対策として昨年10月に4段階の警報が決められ、それぞれ対応する改善措置が発動される手順になっていた。青・黄・橙(オレンジ)・赤の4段階ながら、2月中旬のスモッグには当局から初歩的な青色警報しか出されず、効力の無さに国営メディアもブーイングを浴びせてネット上は騒然、検閲機関が消して回った。警報は3日先までスモッグ状況を予測して出される。20日正午に今度は黄色警報が発動され、「厳重汚染」の日が増えるとして21日正午にオレンジ警報に格上げされた。3日連続で「厳重汚染」の予報なら最上位の赤色警報になり、ナンバープレートの偶数奇数でクルマの運行を強制的に停止させる措置が取られる。半分しかクルマを走らせなくして2008年の北京五輪を青空で乗り切った伝説の「奥の手」だが、経済的な影響は大きく今回は見送られた。

 保存したグラフはいずれも22、24、26日の午前10時現在。ご覧のようにPM2.5濃度は23日朝にわずかに低下した以外は「厳重汚染」状態を続け、25日からは指数500以上の「爆表」状態にまでなった。26日午後6時になってようやく北風が吹き出してスモッグが吹き払われた。過去にはPM2.5が900マイクログラムに迫る高濃度スモッグもあったが、

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