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知られざる日本発のクールジャパン的ヒット商品「エア・ソフト・ガン」はなぜ市場を失いつつあるのか?

清谷信一 軍事ジャーナリスト

 意外に知られていないが、日本で開発され発展したエア・ソフト・ガンが今や欧州で大人気だ。

 エア・ソフト・ガンはBB弾と呼ばれる直径6ミリのプラスチックの弾を空気やガスの力を使って打ち出す玩具の銃だ。エアガン=空気銃と区別するために「エア・ソフト・ガン」と呼ばれるようになった。

 これは我が国では空気銃が実銃扱いであるためだ。メディアでは犯罪にエア・ソフト・ガンが使用された場合、「エアガン」とよく報道するが、これは玩具と実銃を混同していることになる。日本で生まれたこの新しい玩具銃は欧州でも「エア・ソフト」と呼ばれている。

 今を去る30数年前、エア・ソフト・ガンの始祖となるものはツヅミ弾という弾を使用した銃だった。命中精度は低く、外見も実銃とは全く異なり、銀玉鉄砲に毛が生えた程度の「オモチャの鉄砲」だった。

 ところがこれを使用した戦争ごっこ、サバイバルゲームが始まるにつれて、性能は急速にアップした。その理由のひとつは直径6ミリのBB弾とよばれる弾の採用だ。球状の弾によって飛距離が安定した。また6ミリという直径は実銃の弾丸の直径よりも小さく、実銃のモデル化に便利だった。この6ミリBB弾は世界的なデファクトスタンダートとなっている。

 日本のサバイバルゲーマーたちは設定や服、装備など細部にこだわる。当然ながら銃には一番こだわるわけで、このためエア・ソフト・ガンの外見も実銃にそっくりとなった。

 のみならず拳銃はガス圧でスライドが動くなど、実銃と同様なギミックも取り入れられた。また長物とよばれるアサルト・ライフルや短機関銃などは圧縮空気の入ったボンベを銃につないでパワーソースとして使っていたが、東京マルイ社が電動モーターでポンプを駆動する電動ガンを開発し、ボンベやホースが必要なくなった。

 この頃になると行き過ぎたパワーアップが問題となり社会問題化した。このため、ホップシステムと呼ばれるが、チャンバーの一点に圧力をかけるなどしてBB弾に回転をかけることでパワーを上げずに飛距離を伸ばす技術も登場した。

 つまりエア・ソフト・ガンは銃規制が極めて厳しい日本でサバイバルゲームという戦争ゴッコに使用されてきたために進歩を遂げた「オモチャの銃」である。つまり、安全性を確保しつつ、外見や作動は極めてリアルで、射程距離や命中精度が追求されてきた。これは日本のマニアのこだわりの賜物だろう。

 実は自衛隊も、制式採用した89式小銃のエア・ソフト・ガンで訓練している。

 対して欧米ではサバイバルゲームではなく、ペイントボールが流行っていた。これは直径1センチほどのペイント弾を撃ちあうものだ。ペイントガンは本来牧場で牛などにマーキングするもので、これを戦争ごっこに利用したのだ。

 だが、被弾すれば体中がペンキでベトベトになる、銃の命中精度も悪い、銃のデザインが玩具っぽい、弾やパワーソースに使用されるCO2ガスボンベのコストも高い、など多くの欠点があった。

 このため欧州では徐々にペイントボールゲームからエア・ソフト・ガンを使ったサバイバルゲームにトレンドが変わっていった。

 だが当初、欧州市場では、実銃が買えるような値段で玩具の鉄砲など売れないと、反応は冷ややかだった。しかしその頃から欧州での銃規制が厳しくなり、趣味としての銃器の保持が年々厳しくなってきた。このためエア・ソフト・ガンを求めるガンマニアが増えていった。

 欧州でエア・ソフト・ガンが売れるのは、このような銃規制強化も背景のひとつにあると言えるだろう。欧米には実銃を模し、5ミリの鉛の弾丸をCO2で射出する空気銃があり、これは許可証なしで所持できるが威力が強くて戦争ごっこに使用できないからだ。 

 誤解を恐れずに言えば、エア・ソフト・ガンは「人間を撃てるオモチャの鉄砲」

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筆者

清谷信一

清谷信一(きよたに・しんいち) 軍事ジャーナリスト

軍事ジャーナリスト、作家。1962年生まれ。東海大学工学部卒業。03~08年まで英国の軍事誌Jane's Defence Weekly日本特派員。香港を拠点とするカナダの民間軍事研究機関、Kanwa Informtion Center上級顧問。日本ペンクラブ会員。著書に『専守防衛─日本を支配する幻想』『防衛破綻―「ガラパゴス化」する自衛隊装備』『自衛隊、そして日本の非常識』『ル・オタク フランスおたく物語』、共著に『軍事を知らずして平和を語るな』『アメリカの落日―「戦争と正義」の正体』『すぐわかる国防学』など。最新刊に『国防の死角――わが国は「有事」を想定しているか』。

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