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シリア内戦は、ますます「国際内戦」の様相に

高橋和夫 放送大学教養学部教授(国際政治)

 アメリカ、サウジアラビア、ヨルダン、イスラエルなどが、シリアの反アサド勢力への支援の強化に動いている。イギリスの『ガーディアン・ウィークリー』誌の2014年3月21日号の報道である。

 支援の強化は、2月にアメリカのオバマ大統領の安全保障問題補佐官スーザン・ライスとサウジアラビアでシリア問題を担当しているムハンマド・ビン・ナイーフ内務大臣の秘密会談で論議された。

 支援強化の対象となるのは、非宗教的で穏健な自由シリア軍である。具体的には、高性能兵器の供与、援助額の増額、諜報面での支援の強化などが関係諸国の諜報担当者の間で協議されている。カタール、ヨルダン、イスラエルなどの諜報機関も関与しており、兵器の援助の総額は3千万ドルを超えている。

 この援助を受けて、シリア南部で自由シリア軍が既に攻勢を開始している。後方から、この攻勢を指揮しているのは、ヨルダンの首都アンマンに置かれた秘密の司令部である。

 そこには、アメリカ、サウジアラビア、ヨルダンなどに加えイスラエルの諜報担当者までもが作戦に参加している。これまでも、自由シリア軍の負傷者がイスラエルの病院で治療を受けているとの報道があった。もし、今回の報道が事実だとすると、これまでシリア内戦への関与をためらってきたイスラエルが、一歩踏み込んだ形だろうか。その方向転換を示唆するものだろうか。

 これまではシリアの現政権が倒れた場合には、その後に過激なアルカーイダのような組織が権力を奪う可能性を恐れ、イスラエルは積極的な介入を避けてきた。またアルカーイダ系の勢力が権力を掌握しないまでも、アサド政権の崩壊が権力の空白を生むのをイスラエルは懸念していた。混乱に乗じてシリア軍の保有する化学兵器や長距離ミサイルなどが、ヘズボッラーなどの敵対的な勢力の手におちるのを危惧するからである。

 また注目されるのは、アメリカが自由シリア軍に小型の対空ミサイルを供与するかどうかである。

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