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 台湾で、3月18日から4月10日まで学生が立法院を占拠した。与党国民党が中国との経済協定の承認を強引に進めようとしたことへの抗議とされている。

 実は日本でも、この3月下旬からから4月上旬にかけて、極端な言い方をすると、同様のことが起きている。日本の場合は、立法府(国会)ではなく、国会議員の事務室がある議員会館が、「占領」、「ジャック」されたのである。

 3月27日には、高校生・大学生の任意学生組織である「僕らの一歩が日本を変える。」(僕1)の「高校生100人×国会議員vol.4」が参議院議員会館で、4月1日および2日には、高校生だけで主催されている「第2回全国高校生徒会大会」が衆議院第一議員会館で、4月4日には、「東北高校生未来会議」による「現役高校生が考える東北の復興」が参議院会館で開催された(注1)。

 つまり、3月下旬から4月上旬にかけて、議員会館は高校生を中心とした世代に「占拠」され、彼らの熱気と若さに溢れかえっていたことになる。

 もちろんこれらのイベントは、台湾で起きたような「抗議」行動ではないが、ある意味、高校生を中心とする若い世代が、立法府で議論を戦わせ、発信したことには大きな意味がある。

 以前にも何度か紹介したことがあるように(注2)、「僕1」のイベントでは、高校生100人が全国から集まり、海江田万里民主党代表や石破茂自民党幹事長など各党を代表する議員によるスピーチを聞いたり、50名を超える国会議員や有識者などと意見の交換および議論をした。今回は、全体会議のほかに、「18歳成人」「IT×教育」「キャリア教育」「スポーツ復興策」「スポーツのあり方」「ボランティア活動の意義」「サブカルチャーを通じた外交政策」「消費税がもたらすもの」「もし私たちが町を作るなら」「2020年の働き方」の10のテーマでグループ討論が行われた。

 「僕1」は、10代の政治への関心を高めることを目標にしている。高校生が、国会議員と直接話すことで、政治を身近に感じたり、関心を高める有効なチャネルになっているのだ。また高校生が、自分たちの生の声を国会議員や政治に直接届ける機会であると共に、議員が若い世代の声や意見を聞く貴重な場にもなっている。筆者もこのイベントには何度か参加しているが、会場全体の熱気や議論の質のレベルに圧倒された記憶がある。

 「全国高校生徒会大会」は今回で2度目の開催。生徒会活動に関わる高校生約180名が全国から参集した。筆者も、今回のメインイベントである模擬選挙で、審査員として参加した。

 この模擬選挙は、参加した高校生が、生徒会活動に関する「行事」「外務」「内務」「組織運営」「社会貢献」の5テーマで、それぞれ3グループずつに分かれ、合宿をしながら議論し、グループごとに政策提言を作成・発表し、それに対して審査員や参加高校生およびその他の参加者が投票して、そのグループ活動の成果の順位を競うイベントである。

 提言の15の発表は、グループごとに趣向が凝らされ、寸劇あり、パワーポイントの活用あり、小道具の活用あり、パフォーマンスありで、それぞれ個性的だった。

 筆者は審査員として、全グループの発表を長時間にわたり聞いたが、内容が充実していたので、アッという間だった。発表は自分たちの生徒会での実際の経験に基づいたもので、組織運営の難しさや一般の生徒を巻き込むことの難しさが語られた。それらは生徒会の話ではあったが、企業などの組織運営の困難さや政治における有権者の無関心についての発表を聞いているのではないかと錯覚するような内容だった。

 同じ審査員の清水章弘(株)プラスティー教育研究所代表も、「自分はベンチャーを立ち上げて頑張っているが、それができたのも、自分が学生だった時の生徒会活動の経験が原点になっている」と述べていた。筆者も最後のコメントとして、「みなさんの経験されていることは、組織運営の問題であり、民主主義や政治の問題と同じです」と指摘した。

 このように考えると、第二次世界大戦後、「生徒会」制度が学校に導入されたのも、子どものうちから、民主主義や政治、社会について学ぶ機会を提供するという有権者教育・政治教育あるいは市民教育の観点からであったのは頷けるところだ。

 この生徒会大会に参加された高校生は、自身の生徒会活動や今回の大会参加で、組織運営や政治への理解や経験を大いに高め、今後社会に出て仕事をしたり、政治に関わる場合に役立つ糧を得たといえるだろう。

 この大会は、「僕1」のイベントとは異なり、若い世代と政治との直接な関わりではないが、議員会館で開催され、そこからその成果が発信されているので、広い意味で若い世代の政治や社会へのリテラシーを高める活動といえよう(注3)。

 さて、最後の未来会議には、2011年3月に起きた東日本大震災で被災した福島、宮城、岩手3県などの高校生が約100名参加した。今回が第1回で、発起人は安倍晋三首相の昭恵夫人

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筆者

鈴木崇弘

鈴木崇弘(すずき・たかひろ) 城西国際大学客員教授(政治学)

城西国際大学大学院国際アドミニストレーション研究科客員教授。1954年生まれ。東京大学法学部卒。マラヤ大学、イースト・ウエスト・センターやハワイ大学大学院等に留学。東京財団の設立に関わり、同財団研究事業部長、大阪大学特任教授、自民党の政策研究機関「シンクタンク2005・日本」の設立に関わり、同機関理事・事務局長などを経て現職。中央大学大学院公共政策研究科客員教授。著書に『日本に「民主主義」を起業する――自伝的シンクタンク論』『シチズン・リテラシー』『僕らの社会のつくり方――10代から見る憲法』など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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