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ロシアとウクライナが簡単に刀を抜けない理由

清谷信一 軍事ジャーナリスト

 マスメディアを見ていると、ロシアとウクライナの関係が一触即発で、今にも武力衝突や戦争が起こりそうな印象を受ける。

 だが、両国には簡単に刀を抜けない理由がある。

 英国の軍事専門誌「ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー」誌4月2日号は、ロシアとウクライナが航空エンジンのジョイントベンチャーを立ち上げると報じている。そのニュースソースはロシアのイズベスチヤ紙だ。

 それによると、ロシアとユナイテッド・アエロ・エンジン・コーポレーション、ウクライナのモトール・シーチとイーウチェンコ-プログレースの3社がモスクワに新型エンジン開発のジョイントベンチャーを立ち上げ、クリモフTV-3-117、D-436、Al-222などのエンジンを生産する予定だ。

クリモフ製TV3-117VMA エンジンを搭載したカモフKa-50攻撃ヘリ=撮影・筆者拡大クリモフ製TV3-117VMA エンジンを搭載したカモフKa-50攻撃ヘリ=撮影・筆者
 さらに、ロシアが現在開発中のT-50(PAK-FA)のエンジンも開発する予定だ。T-50は現在暫定的に推力14・5トンのTV3-117-Sを使用しているが、新型エンジンは18~19トンの推力を目指すという。

 当然ながら両政府の合意がなければこのようなプロジェクトは不可能だ。

 ウクライナとロシアの軍需産業の相互依存は非常に大きい。それはかつてのソ連時代の兵器製造サプライチェーンと主要ベンダーが、ソ連崩壊によってロシアとウクライナに泣き別れになったからだ。逆にウクライナ企業も、多くのコンポーネントをロシアに輸出しており、ロシアもウクライナも事情は同じだ。

 仮に両国が国交を断絶すれば、両国とも兵器の調達、維持に問題が出るだけではない。両国の輸出の稼ぎ頭である兵器産業、特に単価が高く、メンテナンスが大きな収益を生む航空機業界は大きなダメージを被る。となれば雇用にも深刻な影響が出よう。それは両国とも望むところではあるまい。

 現在ウクライナはロシアに対する武器やコンポーネントなどの輸出を止めている。だが、それを長く続ければ

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筆者

清谷信一

清谷信一(きよたに・しんいち) 軍事ジャーナリスト

軍事ジャーナリスト、作家。1962年生まれ。東海大学工学部卒業。03~08年まで英国の軍事誌Jane's Defence Weekly日本特派員。香港を拠点とするカナダの民間軍事研究機関、Kanwa Informtion Center上級顧問。日本ペンクラブ会員。著書に『専守防衛─日本を支配する幻想』『防衛破綻―「ガラパゴス化」する自衛隊装備』『自衛隊、そして日本の非常識』『ル・オタク フランスおたく物語』、共著に『軍事を知らずして平和を語るな』『アメリカの落日―「戦争と正義」の正体』『すぐわかる国防学』など。最新刊に『国防の死角――わが国は「有事」を想定しているか』。

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