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アルジェリアで現職大統領が4選。しかし……

高橋和夫 放送大学教養学部教授(国際政治)

 ロイター通信が日本時間の2014年4月18日(金)の午前に流した報道によれば、アルジェリアの大統領選挙で、現職のアブドルアジーズ・ブーテフリカ大統領の陣営が勝利宣言を出した。獲得投票数や投票率などの詳細は伝えられていない。

 投票は前日の17日(木)に行われた。結果は未だに正式に発表されていないが、対立候補の一人のアリー・ベンフリースの陣営は、「産業規模」の大規模な不正が行われたと選挙の公正さについて批判している。

 ブーテフリカは77歳という高齢であり、また2013年には脳卒中で倒れパリで3か月も入院していたなど健康上の不安もあり、今回の立候補は論議を呼んだ。支持する声の背景には、1990年代のアルジェリアの内戦を鎮静化させた功績があった。この内戦では15~20万のアルジェリア人が死んだ。しかし、1999年から5年の任期を3度務めており、すでに15年の超長期政権である。交代を求める声も当然ながら強かった。

 ブーテフリカが代表していたのは、フランス語で「プーボワール(権力)」として言及される軍、諜報機関、与党FNL(民族解放戦線)のエリートたちの非公式のネットワークである。1962年の独立以来、アルジェリアを支配してきたのは、このプーボワールである。

 1830年代にフランスの植民地となったアルジェリアは、1954年の独立闘争の開始から1962年の独立達成まで、100万の死者を出すほどの壮烈な独立戦争を戦った。当時のアルジェリアの人口が1000万程度と推定されているので、10人に1人が死んだ計算になる。フランスの激しい弾圧に耐えられたのはFNLが中央集権的な地下組織だからであった。

 しかし独立後は、FNLは批判を許さない絶対的な権力となった。そして軍や諜報機関と協力して今日に至るまでアルジェリアを支配している。権力は腐敗しやすく、絶対権力は絶対的に徹底的に腐敗しやすい。批判勢力が皆無であれば当然である。アルジェリアのプーボワールは腐敗した。西ヨーロッパのガス需要の2割を供給するほどの豊かなガス資源を持ちながら、豊かになったのはエリートたちだけだった。

 これは激しい民族解放闘争を戦った国々で普遍的な現象のように発生する事態である。ベトナム、中国、そしてアルジェリアでの腐敗の構造の背景でもある。

 国民は怒り、1990年代初頭にはイスラム政党を支持した。選挙でFNLが負けると軍が介入してイスラム政党を弾圧した。フランスを筆頭に欧米そして日本は、軍事政権を支持した。軍事政権の安定の方がイスラム政党の民主主義よりも、ましだとの判断であった。この内戦は独立戦争以来の血なまぐさい戦いとなった。

 この内戦を鎮静化させたのが、ブーテフリカだった。武器を置いた者には恩赦を与えるなどして、内戦に疲れた国民の支持を得た。経済的には、この鎮静化を支えたのは、政府による大規模な公共投資であった。これによって失業率を引き下げた。

 問題はお金を投げつけるような政策だった。

 どこから、投げつける金が湧いてきたのだろうか。

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