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選挙権年齢の引き下げと「政治的成人」年齢(上)――「公民教育」の可能性

小林正弥 千葉大学大学院社会科学研究院教授(政治学)

選挙権年齢についての世界と日本との比較

 自民、公明、民主など与野党8党は、憲法改正の手続きを定めた国民投票法改正案を今国会中に成立させることで合意したという(4月3日)。これは、憲法改正の賛否を問う国民投票の投票権を持つ年齢を、4年後に現在の「20歳以上」から「18歳以上」に引き下げるというものである。また、改正法施行後、2年以内に公職選挙法を改正し、選挙権を得る年齢を「18歳以上」とすることも目指すものの、自民党などに反対論もあるので、実現は確実ではない、という。

 この問題は、民法などにおける成人の年齢とも関連しており、親権の及ぶ年齢や飲酒可能な年齢が現在は20歳なので、選挙権を18歳にするためには、成人年齢全般を18歳に引き下げる必要がある、という意見も強い。

 このような選挙権の年齢見直しの動きが起きている背景は、世界の多くの国々で、選挙権が18歳以上になっているということである。選挙権を与える年齢は192の国・地域のうち170の国・地域で18歳以下であり、OECD(経済協力機構)に加盟する34カ国の中でも、18歳までに選挙権を与えていないのは日本と韓国(19歳)だけだ、という。

 もともとは他国でも20歳や21歳の地域が多かったが、イギリスでは1969年、ドイツ、フランスは1974年、イタリアは1975年に18歳に変更されている。この時期には学生運動や社会運動が盛んだったので、青年たち自身が自分たちの意見を政治に早期に反映させることを求めたのである(碓井真史「成人は20歳か18歳か:成人年齢引き下げ問題を考える」)。

 そこで、このように若者の政治参加を促進するために、日本でも遅まきながら、選挙権を18歳に引き下げようという方向が現れているわけである。もっとも、これに対して、最近の若者の成熟は遅いのでそれは不必要だという声も根強く、民法上の成人年齢の18歳への引き下げについては内閣府の世論調査で全体では69%が反対だったという(2013年12月14日)。

政治参加と公共的教育

 政治哲学の観点からこの問題を考えてみると、これについて原理的な賛否は

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筆者

小林正弥

小林正弥(こばやし・まさや) 千葉大学大学院社会科学研究院教授(政治学)

1963年生まれ。東京大学法学部卒業。2006年より千葉大学大学院人文社会科学研究科教授。千葉大学公共研究センター共同代表(公共哲学センター長、地球環境福祉研究センター長)。専門は、政治哲学、公共哲学、比較政治。マイケル・サンデル教授と交流が深く、「ハーバード白熱教室」では解説も務める。著書に『対話型講義 原発と正義』(光文社新書)、『日本版白熱教室 サンデルにならって正義を考えよう(文春新書)、『サンデル教授の対話術』(サンデル氏と共著、NHK出版)、『サンデルの政治哲学 〈正義〉とは何か』(平凡社新書)、『友愛革命は可能か――公共哲学から考える』(平凡社新書)、『人生も仕事も変える「対話力」――日本人に闘うディベートはいらない』(講談社+α新書)、『神社と政治』(角川新書)など多数。共訳書に『ハーバード白熱教室講義録+東大特別授業』(ハヤカワ文庫)など。

 

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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