2014年05月01日
今更言っても詮無いことだが、もし日本の海上保安庁の「海猿」(特殊救難隊)がすぐ現場に駆けつけていたら、もう少し、多くの人命を救えたのではないか。連日テレビで報じられる韓国の大型旅客船「セウォル号」の無残すぎる姿を見て、そう感じざるを得ない。
だが朴槿恵(パク・クネ)政権は、事故発生直後の日本政府の支援申し出を、早々に断った。「反日」を旗印にし、日本に退くに退けない立場を自ら作った大統領としては、政治的リスクを伴う「日本への緊急援助要請」などとても取れるものではなかったのかもしれない。
だがそれは「国民の命より己のメンツを優先した」と言えはしないか。そのことで朴政権を批判する有力マスコミが見当たらないのも、いかにも今の韓国らしい。
それにしても、死者・行方不明者300人を超すこの大事故はひどすぎる。
日本の中古船を改造して定員数を増やし、無茶な制限オーバーの貨物を積み、まるでソウルの暴走タクシーのように、濃い霧を無視し仁川港を出港した安全軽視のめちゃくちゃさ。未熟な3等航海士に操舵を任せた結果、船がバランスを崩して横倒しになり沈没するデタラメぶり。乗客を残しいち早く脱出した船長。おたおたするばかりの政府。
そして、船会社の実質的オーナーが、いかにも怪しげな宗教団体の教祖だったこと。彼はかつて関係する信者らの集団自殺事件とのかかわりが疑われたこともある人物だ。宗教団体を土台に企業グループを形成し、その企業グループはとっくに倒産したはずなのに、なぜか「海の観光ルート」で有力な地位を占めていた。彼と息子たちの、政官界との黒いコネクションが疑われている。
外華内貧そのものというか、古典的「韓国的悪弊」のオンパレードである。「わが国は3流国家だったのか」と韓国マスコミは嘆くが、このありさまは「昔の韓国」そのものだ。
近年「IT強国」と胸を張ってきたものの、安全軽視は何も変わっていなかった。かつて「政治は4流、官僚と行政は3流、企業は2流」と自国を辛辣に評したのはサムスンの李健煕(イ・ゴニ)会長だが、歴史に残るこの大事故を前に彼は何と言うだろう。
政権ナンバーツーとは程遠い首相のクビなど大したことはない。
教祖(船の運航に関わる従業員の大半がその信者と伝えられる)やその家族をさっさと捕まえ、さらに迅速救助に失敗した海洋警察幹部もクビにし、最後に大統領が国民に謝罪することで、局面転換を図りたいところだが、それで非難の矛先をかわせるかどうかはわからない。
国民の政府への不満にいったん火がつくと、収拾の仕様がなくなるほど爆発的に広がる可能性があるからだ。
「ポルソ・チナッソヨ」
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