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「あまりに韓国的な悪弊」のオンパレード――セウォル号沈没事故と朴政権の行方

小北清人 朝日新聞湘南支局長

 今更言っても詮無いことだが、もし日本の海上保安庁の「海猿」(特殊救難隊)がすぐ現場に駆けつけていたら、もう少し、多くの人命を救えたのではないか。連日テレビで報じられる韓国の大型旅客船「セウォル号」の無残すぎる姿を見て、そう感じざるを得ない。

 だが朴槿恵(パク・クネ)政権は、事故発生直後の日本政府の支援申し出を、早々に断った。「反日」を旗印にし、日本に退くに退けない立場を自ら作った大統領としては、政治的リスクを伴う「日本への緊急援助要請」などとても取れるものではなかったのかもしれない。

 だがそれは「国民の命より己のメンツを優先した」と言えはしないか。そのことで朴政権を批判する有力マスコミが見当たらないのも、いかにも今の韓国らしい。

 それにしても、死者・行方不明者300人を超すこの大事故はひどすぎる。

 日本の中古船を改造して定員数を増やし、無茶な制限オーバーの貨物を積み、まるでソウルの暴走タクシーのように、濃い霧を無視し仁川港を出港した安全軽視のめちゃくちゃさ。未熟な3等航海士に操舵を任せた結果、船がバランスを崩して横倒しになり沈没するデタラメぶり。乗客を残しいち早く脱出した船長。おたおたするばかりの政府。

 そして、船会社の実質的オーナーが、いかにも怪しげな宗教団体の教祖だったこと。彼はかつて関係する信者らの集団自殺事件とのかかわりが疑われたこともある人物だ。宗教団体を土台に企業グループを形成し、その企業グループはとっくに倒産したはずなのに、なぜか「海の観光ルート」で有力な地位を占めていた。彼と息子たちの、政官界との黒いコネクションが疑われている。

 外華内貧そのものというか、古典的「韓国的悪弊」のオンパレードである。「わが国は3流国家だったのか」と韓国マスコミは嘆くが、このありさまは「昔の韓国」そのものだ。

 近年「IT強国」と胸を張ってきたものの、安全軽視は何も変わっていなかった。かつて「政治は4流、官僚と行政は3流、企業は2流」と自国を辛辣に評したのはサムスンの李健煕(イ・ゴニ)会長だが、歴史に残るこの大事故を前に彼は何と言うだろう。

沈没した旅客船セウォル号の乗客の家族たちが情報を待つ体育館で、首相辞任のニュースが流れた=2014年4月27日、韓国・珍島拡大沈没した旅客船セウォル号の乗客の家族たちが情報を待つ体育館で、首相辞任のニュースが流れた=2014年4月27日、韓国・珍島
 高い支持率を誇ってきた朴大統領だが、最近の世論調査で支持率は低下した。6月の統一地方選を意識し、事態収拾を急ぐ政権は、首相のクビを差し出した。

 政権ナンバーツーとは程遠い首相のクビなど大したことはない。

 教祖(船の運航に関わる従業員の大半がその信者と伝えられる)やその家族をさっさと捕まえ、さらに迅速救助に失敗した海洋警察幹部もクビにし、最後に大統領が国民に謝罪することで、局面転換を図りたいところだが、それで非難の矛先をかわせるかどうかはわからない。

 国民の政府への不満にいったん火がつくと、収拾の仕様がなくなるほど爆発的に広がる可能性があるからだ。

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筆者

小北清人

小北清人(こきた・きよひと) 朝日新聞湘南支局長

朝日新聞入社後、大阪社会部、AERA編集部などを経て現在、朝日新聞湘南支局長。92~93年、韓国に語学留学。97年、韓国統一省傘下の研究機関で客員研究員。朝鮮半島での取材歴多数。

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