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憲法を議論するために「討論型世論調査」を活用しよう

鈴木崇弘 城西国際大学客員教授(政治学)

 日本国憲法の改正に関してさまざまな問題が議論されている。それらは、解釈改憲である集団的自衛権の問題をはじめとして、平和主義を規定し戦争の放棄を謳っている9条問題や憲法改正手続きを規定する96条の問題、さらには(日本国)憲法の制定過程や策定関係者の問題など多種多様である。

 だが、それらの議論を聞いていて、どうしても違和感を持たざるをえない点がある。それは、国民が社会や国でどのように生活し、生きていきたいかという議論が欠落していることである。

 憲法は本来国の形を決めるものであり、国民と権力の側との関係性を示すものである。しかし、日本社会が今後も民主主義という仕組み・政治制度をとっていくと仮定するのであれば(もしとらないのであれば、もちろん別の話になるが)、国民が日本をどのような国・社会にし、どのような社会で生きていきたいか考え、そのような社会を実現するには、どのような政治制度およびいかなる憲法をもつべきかを検討すべきはずである。その意味で、まず、国民の考えや意見を知り、確認する作業が必要だ。

 ところが、現在の憲法論議は、大事なことではあるといえ、条文改正や現行憲法への想いや意見の議論が中心になっていて、何だかおかしい状況になっているような気がする。

 憲法が、押し付けではなく、日本の国民や社会のものになるには、国民の民意を知るというような根本的な作業やプロセスを経て、その成果に基づいて、議論がなされ、憲法条文案などが作成されるべきなのではないだろうか。現在、政党や報道機関、有識者グループなどによっていくつかの憲法草案がつくられている。それらにはもちろん大きな意味や役割があるが、国民の意見や考えを聞くプロセスや作業が十分であるとは思えない(注1)。

 そこで、筆者は、本記事で一つの提案をしたいと思う。

 独立系のシンクタンクや政府・国会が、国民が住みたい日本社会に関しての世論調査を行い、民意を調べてはどうだろうか。しかも、その場合の世論調査は、一般的な世論調査のように即興的に民意を問うものではなく、じっくりと考える機会を提供して、国民の考えを知る調査をすべきだと考える。

 それは、憲法は、時々の状況において行われる選挙などの民意とはや異なり、国民がある程度の長い期間において使い続けていくべきものだからである。国民も、それをよく理解した上で、自分の考えを深め、それに基づいて慎重に判断して、自分の理想とする社会像を判断していかなければならないからだ。

 そのような判断なりプロセスという意味では、この世論調査では、討論型世論調査(DP)という手法を活用して実施してみてはどうだろうか。このDPは、民主党政権の時に、2011年の東日本大震災における原発事故を受けて、日本のエネルギー政策の方向性を考えていく上で行われた手法でもある。

 このDPは、「通常の世論調査(無作為抽出による議題になる政策課題の世論調査)」と「討論フォーラム(世論調査の回答者から選定された参加者による討論フォーラム。小グループ討論、専門家との全体討議および討論型世論調査から構成)」から構成されていて、無作為抽出で選ばれた偏りのない社会を反映した人々が、十分な情報や理解を得て判断できるプロセスが組み入れられた世論調査である(注2)。

 もう少し詳しく説明しておこう。

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筆者

鈴木崇弘

鈴木崇弘(すずき・たかひろ) 城西国際大学客員教授(政治学)

城西国際大学大学院国際アドミニストレーション研究科客員教授。1954年生まれ。東京大学法学部卒。マラヤ大学、イースト・ウエスト・センターやハワイ大学大学院等に留学。東京財団の設立に関わり、同財団研究事業部長、大阪大学特任教授、自民党の政策研究機関「シンクタンク2005・日本」の設立に関わり、同機関理事・事務局長などを経て現職。中央大学大学院公共政策研究科客員教授。著書に『日本に「民主主義」を起業する――自伝的シンクタンク論』『シチズン・リテラシー』『僕らの社会のつくり方――10代から見る憲法』など。

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