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拉致「再調査」合意と北朝鮮の権力闘争――北は「どういう日本人」を出してくるのか

小北清人 朝日新聞湘南支局長

 最近のことである。北朝鮮にいる可能性濃厚とされる行方不明者(特定失踪者)の女性の家族のところに、県警の捜査員が訪れたという。

 「県警のホームページに娘さんのお名前を掲載させてほしい」

 娘が本当に北にいるのか半信半疑の家族は、ホームページ掲載を拒んできた。説得に訪れた捜査員はこう付け加えた。

 「これは上の指示です」

 「上」は警察庁を指すようだ。

 2月には、こんなこともあった。民主党の松原仁衆院議員(野田政権時の拉致問題担当相)が新潟での拉致問題関係の集まりで、こう口にしたという。

 「大沢さんと藤田さんは早く拉致被害者の認定をすべきだ」

 大沢さんとは、新潟県・佐渡の県事務所に勤めていた1974年2月の夜、焼き肉屋で食事を終え、外に出て間もなく行方を絶った大沢孝司さん。現場付近には北朝鮮のものとみられるマッチが落ちていたとされる。

 藤田さんとは76年に埼玉県川口市で失踪した藤田進さんを指す。車で新潟まで運ばれ船で連れ去られたとの関係者証言がある。

 この3人、おそらくは日本政府が北朝鮮当局に渡した「日本から拉致された可能性が排除できない行方不明者リスト」に含まれているだろう。菅官房長官は6月8日朝のフジテレビの討論番組で、リストを渡したことを明らかにした。

 「北朝鮮にいるすべての日本人について再調査する」と北朝鮮が約束した日朝合意(5月30日発表)。北朝鮮側が作る調査委員会の進展に応じ、日本政府は独自に課してきた経済制裁の一部を解除する内容となっている。

 禁じられてきた「北朝鮮船の日本入港」も、人道目的に限り認めるとしている。朝鮮総連は制裁解除を見越し、毛布などを大量に集めろと組織に指示したとの情報がある。

 入港有力なのは鳥取県・境港。境港から出る地元の漁船は以前、日本にいる関係者の仲介のもと、北朝鮮の東海岸沖の海域(北の軍部が仕切る)に入ってカニ漁を行っていたという。

 合意のミソは、「すべての日本人について調査する」としたことだ。「すべての日本人」なら、対象は拉致被害者だけでなく、北朝鮮に渡った在日朝鮮人の日本人妻やその子ども、敗戦後も日本に戻れなかった在留日本人関係、あるいは自らの意志で北に入った日本人や、約45年、北にとどまる「よど号ハイジャック犯」も含まれる。

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筆者

小北清人

小北清人(こきた・きよひと) 朝日新聞湘南支局長

朝日新聞入社後、大阪社会部、AERA編集部などを経て現在、朝日新聞湘南支局長。92~93年、韓国に語学留学。97年、韓国統一省傘下の研究機関で客員研究員。朝鮮半島での取材歴多数。

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