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ウクライナ紛争と航空機撃墜(上)――プーチン氏の苦境

大野正美 朝日新聞記者(報道局夕刊企画班)

 ウクライナ紛争をめぐり、ロシアのプーチン大統領の苦境が続いている。

 マレーシア航空機の撃墜事件のあと、プーチン氏は、国際社会が事件への関与を強く指摘するウクライナ東部の親ロシア派武装勢力に対し、事件の原因究明に向けて影響力を行使する考えを示した。ウクライナ政府軍との間で激しい戦闘を続ける親ロシア派との関係を一貫して否定してきただけに、民間機撃墜という悲劇的な事態を受け、国際社会に一定の譲歩の姿勢を示したとも、うかがえる動きだった。

マレーシア機墜落現場マレーシア航空機の墜落現場
 だが、その後、米欧がさらにきびしい制裁をロシアに課しても、武器供与など親ロシア派への支援をむしろプーチン氏は強化しているという批判はやまない。

 ロシア軍は、ウクライナ国境地域に再び2万人規模の部隊を集結させ、軍事演習を始めた。

 プーチン氏は国際的な孤立の深まりを見すえ、経済を基本的に国内の資源と産業でやりくりする「自給自足」的な経済への移行の必要性すら言及し始めた。

 短い期間に柔軟策から強硬策を行き来する政策の振幅の大きさに、現状の隘路から抜け出す有効な道を見出せずにいるプーチン氏の心中がのぞく。

 その苦境の原因に、国内でのメディア統制、および親ロシア派勢力を使った旧ソ連諸国への影響力行使という、これまで自らの巨大な権力を築き上げるのに大きく貢献してきたプーチン氏の得意とする分野で起きたつまずきをあげる見方が、ロシアに強く出ている。

 特に大きいのが、メディア統制の問題である。

 2014年2月にウクライナでヤヌコビッチ前大統領の政権が崩壊し、3月にロシアがクリミア半島を併合するまでの紛争をめぐる報道で、ロシアはウクライナに対して圧勝した。

 ロシアのメディアは、クレムリンの統制下にある国営の全国ネット・テレビを中心に、ウクライナに新しくできた暫定政権が、「極右」「ファシスト」「ネオ・ナチ」「反ユダヤ主義」の過激なウクライナ民族主義勢力に主導されており、「ロシア系住民またはロシア語を話す住民を迫害の危機に瀕している」とするキャンペーンを徹底して繰り広げた。

 実態は、全く異なる。

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