2014年08月22日
敢えてこれらの言葉を省略するというのは、明らかに意識的な行為である。やはり、首相は「開戦」の可能性を念頭においているのだろう。
もし、前稿で述べたように安倍政権の目指す体制変革を「右翼的体制変革」ではなく「準極右的体制変革」とみなすならば、その行き着く先として、通常の国家主義的政治体制ではなく、「戦前」日本の「超国家主義的」政治体制を想定することも理論的には可能だろう。
もちろん現在の安倍政権はそこまでの政治的主張はしていないが、このような仮説を立てて、そこからの距離を測ることは有意義だろう。
「戦前」日本の軍国主義的政治体制について、戦争直後に最も鋭い分析を加えたのが、政治学者・丸山眞男の超国家主義論である。「超国家主義(ウルトラ・ナショナリズム)」という言葉を用いているのは、彼が海外と同様に日本にも健全なナショナリズム(国家主義・国民主義)は存在することを認めているからであり、それと区別するためである。
そこで、以下では、民主主義で立憲主義的なナショナリズムと区別して、極右的で非民主主義的・非立憲主義的な国家主義を「超国家主義」と呼ぶことにしよう。
戦前日本の超国家主義においては、国家神道に基づく天皇制をその精神的機軸としていた。多くの人びとは、天皇を現人神と信じて、天皇のために戦地に駆り出され死んでいった。それに対して、安倍政権は国家神道に基づく天皇制を体制変革の機軸にしてはいないから、その目指す体制変革の内容は、「戦前」の政治体制とは距離がある。
しかし、だからといって、そういった方向に向かう危惧が皆無とは言えない。
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