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憲法を知ろう!――聴く、読む、考える

鈴木崇弘 城西国際大学客員教授(政治学)

 最近出版された書籍『憲法主義――条文には書かれていない本質』(以下、『憲法主義』と呼ぶ)発刊記念の公開模擬授業に参加してきた(8月23日)。

 同書は、気鋭の憲法学者の南野森(みなみの・しげる)さんが、憲法を暗唱するAKB48のアイドル内山奈月(うちやま・なつき)さんに、憲法について講義するという体裁で書かれている。

 非常に理解しやすく、具体的な実例や例示を織り込みながら対話形式で書かれているので、非常に読みやすく、わかりやすい内容で、一気に読破できる。またそのマンツーマンの講義の様子の一部は、出版元のHPの動画からも観ることができる。

 今回の公開授業は、その延長として、南野さんと内山さんによる憲法に関する授業を公開で行ったものであった。前半は南野さんによる違憲審査の問題における司法権の独立に関する講義と内山さんとの質疑応答、後半は内山さんによる「憲法裁判所」に関するプレゼンと南野さんのコメントからなっていた。

 そして最後には、内山さんは、「憲法アイドルという地位を確立し、AKBで上がっていきたい! (AKBの)選抜メンバーを目指して頑張る!」と力強く宣言し、聴衆から拍手喝采を浴びた。

 これに対して、南野さんは、「憲法主義」合格と記した同書を、合格証書として内山さんに渡した。受け取った内山さんは、「(自分は『なっきー』なので)南野先生は、『しげっきー』と呼びましょうよ」と呼びかけた。南野さんは、「時には、『しげっきー』で」と返答して、照れまくっていた。

 全体としては、憲法問題を議論していく上で、多くの具体例やたとえが織り込まれ、時にはジョークあり、時にはアイドルから憲法学者への茶化しあり、生真面目な憲法学者の一生懸命さや聴衆の心をつかもうとする必死さと、アイドルの軽妙なノリと明るさが、相互に刺激し合い、憲法との距離を縮め、憲法への親近感を生み出し、ユニークで、面白いイベントになっていた。

 今月の8月15日は、敗戦から69年を迎えた日だった。その敗戦の結果として生まれたのが、現在の日本国憲法だ。

 2012年12月末の総選挙で、自民党が大勝し、第二次安倍政権が誕生した。安倍総理は、自身の信念として、憲法改正を標ぼうしている。このため、与党が国会でかなりの多数を占めるなか、憲法改正の論議も現実味を帯びており、さまざまな議論や論争が生まれている。

 だが、憲法は、国民ではなく権力者や政府を対象にしているというイメージがあって特に若い世代には分かりにくく、縁遠く感じてしまいやすい。そのため、国民の多く、特に若い世代の多くには、憲法への理解や関心が必ずしも盛り上がっているとはいえない。

 しかしながら憲法は、国民と政府との契約のようなものであり、国民全員にとっても大きな意味と影響を有するものである。

 その問題を少しでも解決していくために生まれてきたのが、冒頭の書籍と関連イベントである。憲法の書籍は、従来何らかの意味で法律に関わるあるいは関心を有する者向けに書かれることが多かった。しかし最近では、同書のように、一般向け特に若い世代向けに、非常に理解しやすく、憲法について考えることを促す書籍がいくつかでてきている。

 その例が、『聴く日本国憲法』(以下、『聴く憲法』と呼ぶ)や『僕らの社会のつくり方~10代から見る憲法~』(以下、『10代憲法』と呼ぶ)などである。

 前者は、女性アナウンサーが、日本国憲法を朗読するCDが附属で付いており、憲法の条文の説明や憲法をめぐる対談等も掲載されており、日本国憲法を概括的に知るのに最適の書籍だ。

 後者は、拙記事「憲法論議深化のために若い世代の声を活かそう!」に書かれているように、改正でより影響を受ける若い世代の憲法に関する声を伝えており、憲法に関わるさまざまな課題や問題について現在そして今後の可能性を考える上で貴重な情報を提供している。

 実は、本記事で紹介しているこれらの憲法本は、憲法と国民の距離を縮めるという共通の目的や意味があるが、その役割や意義は異なっており、相互補完的なものなのではないかと思う。そこで、筆者は、それら3冊を次のように活用することをお薦めしたい。

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