2014年09月03日
「この法律の適用に当たつては、国民の権利を不当に侵害しないように留意しなければならない。」(国会議事堂等周辺地域及び外国公館等周辺地域の静穏の保持に関する法律 第八条、昭和六十三年十二月八日法律第九十号、最終改正:平成一一年一二月二二日法律第一六〇号)
そのさい、国会周辺での大音量の街宣やデモに対する規制も併せて議論する方針を確認し、高市早苗自民党政調会長は「党本部にいると、何時間も仕事にならない状況が続くことがある」「電話の声も聞こえず、仕事にならない。批判を恐れず議論を進めたい」と述べた(9月1日に事実上撤回)。
さる8月30日に行われた川内原発の再稼働反対を訴えた国会前抗議では主催者発表で7000人ほどが集まり「全原発の廃炉を求める声が相次いだほか、市民のデモ規制の検討を始めた自民党への批判も上がった」という。
通常の金曜官邸前抗議よりも参加者数が多いため、高市政調会長の発言の通りであれば、自民党本部前まで抗議の声が響いてさぞうるさかろうと思って行ってみたのだが、意外にも国会前の声は殆ど聞こえず、党本部の至近にある首都高速道路の騒音がとにかくうるさかった。
筆者と同様に中立の立場である、党本部を警備する警察官に聴いても、やはり抗議行動の声はほぼ聞こえないが、高速道路の音がうるさく感じるとの同様の感想を得た。
もちろん音に対する個人差や、気になる声や音の部類はあるだろう。
おそらく高市政調会長をはじめ、自民党の「ヘイトスピーチ」対策を検討するプロジェクトチームの一部参加議員にとって、近年の脱原発を訴え、集団的自衛権の解釈改憲に反対する人々の抗議の声は、首都高速の騒音などお構いなしで「電話の声も聞こえず、仕事にならない」くらい気になるほどに「耳が痛い」ものであり、「うるさい」のは間違えないようだ。
同会合では警察庁の担当者が、国会周辺での拡声機の使用を規制する静穏保持法に基づく摘発が年間1件程度との現状を説明したが、この点については「拡声器を使った国会周辺での街宣活動は現在も静穏保持法で禁じられている」と報じた新聞もあった。
今回取り上げられている静穏保持法とは、冒頭に掲げた「国会議事堂等周辺地域及び外国公館等周辺地域の静穏の保持に関する法律」のことだ。同法は、1988年(昭和63年)12月1日に衆議院に当時の議院運営委員長であった故三塚博衆院議員によって提出され、自民、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党・民主連合、日本共産党・革新共同の五派共同提案による委員会決議ならびに、衆参両院の本会議での賛成を得て可決成立したものである。
ちなみに故三塚博衆院議員は、今回の物議を醸した発言の主である高市政調会長が、自由党への参加を経てのちに自民党へ入党したときから長年在籍していた清和政策研究会の領袖であった。
ではそもそも静穏保持法とはどういう法律なのだろうか。
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