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国会周辺でデモをする自由(中)――自民党本部前でうるさいのは首都高の騒音だ

五野井郁夫 高千穂大学経営学部教授(政治学・国際関係論)

 「この法律の適用に当たつては、国民の権利を不当に侵害しないように留意しなければならない。」(国会議事堂等周辺地域及び外国公館等周辺地域の静穏の保持に関する法律 第八条、昭和六十三年十二月八日法律第九十号、最終改正:平成一一年一二月二二日法律第一六〇号)

830集会拡大川内原発の再稼働反対を訴えた国会前抗議の様子=2014年8月30日、筆者撮影
 自民党は8月28日、一般市民から国連の各種委員会まで国内外からのヘイトスピーチに規制を求める声を受け、また2020年の東京五輪を見据えて、人種差別を煽動する街宣活動である「ヘイトスピーチ」対策を検討するプロジェクトチームの初会合を党本部で開催した。

 そのさい、国会周辺での大音量の街宣やデモに対する規制も併せて議論する方針を確認し、高市早苗自民党政調会長は「党本部にいると、何時間も仕事にならない状況が続くことがある」「電話の声も聞こえず、仕事にならない。批判を恐れず議論を進めたい」と述べた9月1日に事実上撤回)。

 さる8月30日に行われた川内原発の再稼働反対を訴えた国会前抗議では主催者発表で7000人ほどが集まり「全原発の廃炉を求める声が相次いだほか、市民のデモ規制の検討を始めた自民党への批判も上がった」という。

自民党本部に至近の首都高速(2014年8月30日、筆者撮影)拡大自民党本部に至近の首都高速=2014年8月30日、筆者撮影
 筆者もたまたま平河町と永田町で仕事があったため、そのついでに国会前抗議を眺め、その足で永田町1丁目の自民党本部前に立ち寄ってみた。

 通常の金曜官邸前抗議よりも参加者数が多いため、高市政調会長の発言の通りであれば、自民党本部前まで抗議の声が響いてさぞうるさかろうと思って行ってみたのだが、意外にも国会前の声は殆ど聞こえず、党本部の至近にある首都高速道路の騒音がとにかくうるさかった。

 筆者と同様に中立の立場である、党本部を警備する警察官に聴いても、やはり抗議行動の声はほぼ聞こえないが、高速道路の音がうるさく感じるとの同様の感想を得た。

自民党本部前での警察官と筆者のやりとり=2014年8月30日19時4分、筆者撮影

 もちろん音に対する個人差や、気になる声や音の部類はあるだろう。

 おそらく高市政調会長をはじめ、自民党の「ヘイトスピーチ」対策を検討するプロジェクトチームの一部参加議員にとって、近年の脱原発を訴え、集団的自衛権の解釈改憲に反対する人々の抗議の声は、首都高速の騒音などお構いなしで「電話の声も聞こえず、仕事にならない」くらい気になるほどに「耳が痛い」ものであり、「うるさい」のは間違えないようだ。

 同会合では警察庁の担当者が、国会周辺での拡声機の使用を規制する静穏保持法に基づく摘発が年間1件程度との現状を説明したが、この点については「拡声器を使った国会周辺での街宣活動は現在も静穏保持法で禁じられている」と報じた新聞もあった。

 今回取り上げられている静穏保持法とは、冒頭に掲げた「国会議事堂等周辺地域及び外国公館等周辺地域の静穏の保持に関する法律」のことだ。同法は、1988年(昭和63年)12月1日に衆議院に当時の議院運営委員長であった故三塚博衆院議員によって提出され、自民、日本社会党・護憲共同、公明党・国民会議、民社党・民主連合、日本共産党・革新共同の五派共同提案による委員会決議ならびに、衆参両院の本会議での賛成を得て可決成立したものである。

 ちなみに故三塚博衆院議員は、今回の物議を醸した発言の主である高市政調会長が、自由党への参加を経てのちに自民党へ入党したときから長年在籍していた清和政策研究会の領袖であった。

 ではそもそも静穏保持法とはどういう法律なのだろうか。

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筆者

五野井郁夫

五野井郁夫(ごのい・いくお) 高千穂大学経営学部教授(政治学・国際関係論)

高千穂大学経営学部教授/国際基督教大学社会科学研究所研究員。1979年、東京都生まれ。上智大学法学部卒業、東京大学大学院総合文化研究科国際社会科学専攻博士課程修了(学術博士)。日本学術振興会特別研究員、立教大学法学部助教を経て現職。専門は政治学・国際関係論。おもに民主主義論を研究。著書に『「デモ」とは何か――変貌する直接民主主義』(NHKブックス)、共編著に『リベラル再起動のために』(毎日新聞出版)、共訳書にウィリアム・コノリー『プルーラリズム』(岩波書店)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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