2014年09月25日
英国からの独立を問うスコットランドの住民投票や、イスラム教スンニ派の過激派組織「イスラム国」のイラクとシリアでの勢力拡大――。世界が目まぐるしく動くなか、アジアではインド新首相のナレンドラ・モディ氏が巧みな外交を繰り広げ、着実に得点を重ねている。
モディ氏は1950年に西部グジャラート州で生まれ、駅で紅茶を売って豊かでない家計を助けたといわれる。インド人青年の団結強化を目指すヒンドゥー至上主義団体の民族義勇団に参加し、1987年にインド人民党に入ったナショナリストだ。
一方でモディ氏は2001年にグジャラート州首相に就任後、同州のインフラ整備に奔走し、インドでは極めて珍しい「停電ゼロ州」を実現し、規制も緩和して外資を次々に呼び込んだ現実主義者でもある。
「メーク・イン・インディア」(インドで物づくりを)は「アベノミクス」ならぬ「モディノミクス」のスローガンである。人民党が今年10年ぶりに政権に復帰したのも、経済界から信頼されるモディ氏が首相候補だったことが大きい。
モディ氏は5月26日の首相就任宣誓式に領土問題を抱えるパキスタンのシャリフ首相を招待し、シャリフ首相も応じた。印パ両国の首脳が相手国の首相就任宣誓式に出席したのは史上初だった。まずは隣国との関係改善を演出したモディ氏は主要国のなかで最初に日本を8月末から訪問した。
で、両国とも隣で発展する中国に敏感だ。
だから、メディアは今回の日中首脳会談に関して、安倍首相とモディ首相は「アジアで軍事的な影響力を強める中国を牽制(けんせい)する意図でも共通する」(朝日新聞)などと書いた。
「牽制」とは大辞林(三省堂)によれば、(1)相手を威圧したり監視したりして自由な行動を妨げること (2)作戦上、自分の都合のよい所へ敵を引きとめること。また、敵の動きを封じること。
野球の「牽制球」ならまだ穏やかだが、第三国を「威圧したり監視したり」とは結構物騒な言葉遣いだ。
しかし、日本のメディアは外交を報じるときに「牽制」を極めて多用する。
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