2014年10月15日
30数年前。私は、「坂本ゼミ」の、あまり勉強に熱心でない学生だった。
だから、何を学んだのか、坂本義和先生にどんな指導を受けたのか、まったく記憶にない。
ただ、「中立日本の防衛構想」を読んだことだけは、鮮明に覚えている。
当時は、非武装中立は絵空事だと思っていた。憲法第9条は自衛隊の存在と矛盾すると感じていた。そこに、「国連警察軍を日本に駐留させる」という構想だ。
うん、これならいける、とうなずいた。
国連警察軍は、5大国は除外して、「中立的傾向の国」の部隊を集め、日本に駐留する。これをきっかけに自衛隊を大幅に縮小して、補助部隊として国連軍司令官の指揮下におく、というものだ。もちろん、容易には実現しない。
まして、冷戦の記憶が遠ざかり、米国との同盟関係が半世紀以上続く今となっては、「中立」といっても、にわかに実感がわかない。しかし、現状の枠組みが長く続く保証もない。国連警察軍構想は、なお健在だ。
「いまの知識人はまだ、構想力が弱い」と叱っていた。3年前の朝日新聞の同僚記者のインタビューだ。
中国やインドの大国志向は認めつつも、「中国の指導者は、中国民主化という不可逆の未来を読む力が弱い」。経済や情報がグローバル化する時代に「国境の意味は低下し、国家は脱力化している」と国家の限界を指摘した。代わりに「市民のグローバルな連帯」の重要性を強調した。
「これからの主体となるのは市民」「市民の連帯をどうグローバル化していくかだ」
物静かな語り口が、聞こえてくるようだ。
冷静な現実主義者の半面、生活者としては、おっちょこちょいな顔も見せた。
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