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政治資金問題から読み解く政権党の前近代的体質

小林正弥 千葉大学大学院社会科学研究院教授(政治学)

ダブル辞任の衝撃――閣僚の約3分の1が疑惑を受ける「政治資金疑惑内閣」

 小渕優子経済産業相と松島みどり法務大臣が、政治資金問題で同じ日にダブル辞任した(10月20日)。

 小渕氏は、2010年や2011年に支援者向けの観劇会をめぐり政治資金報告書の収支に不一致があり、支持者への利益供与ないし報告書の記載漏れ、親族のブティックからのネクタイやハンカチの購入、ベビー用品の購入、さらにはジャガイモやカレンダー、ワインなどの物品供与などが問題となった。松島氏は、過去3年間に選挙区の祭りで「うちわ」を配ったことが問題とされた。

宮沢洋一経産相拡大小渕優子氏の後任・宮沢洋一大臣も「SMバー」への支出で釈明に追われた
 安倍政権は女性閣僚の登用をアピールしていただけに、これが大きな痛手であることは言うまでもない。それだけではなく、小渕氏の後任として経済産業相となった宮沢洋一氏の資金管理団体からは、SMバーへの支出が発覚し、宮沢氏は秘書が行ったと説明した(10月23日)。

 また、江渡聡徳(えとあきのり)防衛相の資金管理団体が2009年と2012年の4回にわたり、江渡氏個人に計350万円を寄付したと政治資金収支報告書に記載しており、それは禁じられているので報告を修正した。

 西川公也農水相も経営破綻した「安愚楽(あぐら)牧場」(栃木県)から2010年までに計125万円の政治献金を受けたが、国会で追及されて返金したと説明した。

 さらに、塩崎恭久厚生労働相は、地元選挙区の特別養護老人ホーム開設に必要な条件を、秘書が厚労省に問い合わせをしたことが「口利き」に当たるのではないかと指摘されている。これらは、いずれも指摘や批判が正しければ、法的ないし道義的問題となる。

 さらに他にも、真偽の程は定かではないものの、安倍政権の中枢部も含めて複数の疑惑が取り沙汰され始めている。

 こうなると、第2次安倍改造内閣の閣僚18人には、経産相2人、法相、防衛相、農水相、厚生労働相とあわせて延べ6人、つまりその約3分の1以上が政治資金問題で批判されていることになる。これを見ると、この改造内閣は、「政治資金疑惑内閣」とでも呼びたくなるほどである。

親分―子分関係の古い自民党の復活

 なぜ、このような問題が続出しているのだろうか。

 これらの疑惑には2009年くらいからのものが多く、安倍政権が発足した2012年から顕著になったものもある。おそらく、政権政党となってから権力の傲りが生じ、自民党において政治資金の流用や利益供与、口利きなどが増えてきたのであろう。個々の閣僚には安倍首相の任命責任が問われるが、おそらくは自民党全体に見られる傾向の表れではないだろうか。

 つまり、政権に戻ったことにより、かつての自民党の体質が再び現れたのだろう。

 もともと、55年体制における自民党の最大の問題点の1つは、「政治とカネ」の問題だった。自民党は権力についていたことにより、官庁や財界・業界と密接な関係を持ち、いわゆる「鉄のトライアングル」を形成して政官業癒着が生まれた。そして、族議員が暗躍して政策に大きな影響を与え、支持者や支持団体に利益誘導や利益供与を行って集票をしていた。

 これを可能にしたのが後援会や派閥であり、それを支えていた人間関係が「親分―子分関係」である。これは学問的には「パトロンークライアント関係」とか「恩顧主義」と言われる。

 親分がポストや公共事業やお金を子分に配分する見返りとして、子分は親分に忠誠を誓い、親分のために働く。親分は子分の名誉欲や利益欲を利用して自分の権力を増大させるわけであり、結局は私利私欲に基づく政治となって公共的利益に反するのである。

 このような政治構造が批判の的となり、「政治改革」が行われ、さらに政権交代につながった。ところが、自民党が政権に復帰すると、やはり再びこのような体質が復活してきたわけである。

 ある意味で、小渕氏の問題はこのことを象徴している。小渕氏は、小渕元首相の娘であり、疑惑に対して辞任の記者会見で「長年、私が子どものことからずっと一緒に過ごしてきた、そういう信頼するスタッフ」についての監督責任が十分でなかったと述べた(10月20日)ように、このような体質は小渕元首相の時代からのやり方を受け継いでいる面があるからである。

 事実、小渕元首相の秘書であって30年以上も小渕家に仕えてきた折田謙一郎町長(群馬県中之条町)が突然、辞任した。小渕氏が、親族の店からのネクタイやハンカチの購入について「喜んでくださる人 ・・・ログインして読む
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筆者

小林正弥

小林正弥(こばやし・まさや) 千葉大学大学院社会科学研究院教授(政治学)

1963年生まれ。東京大学法学部卒業。2006年より千葉大学大学院人文社会科学研究科教授。千葉大学公共研究センター共同代表(公共哲学センター長、地球環境福祉研究センター長)。専門は、政治哲学、公共哲学、比較政治。マイケル・サンデル教授と交流が深く、「ハーバード白熱教室」では解説も務める。著書に『対話型講義 原発と正義』(光文社新書)、『日本版白熱教室 サンデルにならって正義を考えよう(文春新書)、『サンデル教授の対話術』(サンデル氏と共著、NHK出版)、『サンデルの政治哲学 〈正義〉とは何か』(平凡社新書)、『友愛革命は可能か――公共哲学から考える』(平凡社新書)、『人生も仕事も変える「対話力」――日本人に闘うディベートはいらない』(講談社+α新書)、『神社と政治』(角川新書)など多数。共訳書に『ハーバード白熱教室講義録+東大特別授業』(ハヤカワ文庫)など。

 

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