2014年11月13日
11月11日、光州地裁はセウォル号の船長だったイ・ジュンソク被告(69)に対し、懲役36年の判決を言い渡した。検察は船長以下4名に殺人罪を求刑したが、それが適用されたのは機関長のみ。ただ、それは「怪我をして動けなくなった同僚を見捨てた罪」であり、乗客に対しての殺人罪が運行スタッフに適用されることはなかった。
NHKのニュースで韓国法に詳しい専門家などのインタビュー等を加え、「殺人罪が適用されなかったのは妥当」というニュアンス。一方、韓国KBSは求刑の時と同様、その件に関しては事実関係以上の深い言及はなかった。
ただ、この日のニュースは久しぶりにセウォル号関係で埋まった。トップは事故から209日目にして行方不明者の捜索の打ち切りが決定したというニュースだった。「ダイバーたちの安全を優先して……」。
憔悴した様子の家族の会見は胸が痛むものだった。それを見ながら、東日本大震災後に素手で瓦礫を掘り起こし、家族の遺体を探す被災者の人々を思い出した。
ある韓国人医師はこんな話をしてくれた。
「うちの病院に5月になると必ず具合が悪くなって来院するおばあちゃんがいるんです。その月に子供さんを亡くしたそうで。もう70年以上になるのに、その月になると体が泣く」
「子供を持つ親なら」という言い方は好きではないが、でもやはり体がバラバラになるような絶望は、他のことでは想像しにくい。
セウォル号事故では直接の犠牲者家族だけでなく、一般国民、特に母親たちには大きな衝撃だった。他のことを考えられない。何をしていても涙が出てくる。
9・11後の米国や震災後の日本もそうだった。余震に怯えながら過ごす日、小さな音にも敏感になった。
「妻は新聞やニュースを見なくなりました。セウォル号という名前を聞くと、身体の震えが止まらなくなる」
この友人には亡くなった高校生と同じ年の娘さんがいる。今でも事故について奥さんと会話はできないという。
そういう話を聞くと、セウォル号事故についての報道が、限定されたものではあるのも仕方がないかなという気持ちになる。
例えば、9月末にフジテレビ系の「Mr.サンデー」で放映された「韓国セウォル号沈没の真相」というスペシャル番組は韓国の一部でも話題になった。
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