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貴重な情報源が出た。政治や政権運営に活かそう

鈴木崇弘

鈴木崇弘 城西国際大学客員教授(政治学)

 派手ではないが、貴重でユニークな資料が最近発行された。報告書『政策形成・決定へのNGO・NPOの関与――市民・NGOの参加で市民社会を強くする』(市民がつくる政策調査会[市民政調]発行)が、それだ。同報告書は、市民政調のHPからダウンロードも購入も可能だ。

 では、この報告書がなぜ貴重でユニークなのか?

 それは、民主党政権のときに、その政策形成に実際に関わったNGO・NPOの関係者あるいは有識者を中心に複数の分野にわたって、包括的に書かれているからだ。

 これまでにも、民主党政権に関わった議員や民間人が本や論文を書いている。

 例えば、『東電福島原発事故 総理大臣として考えたこと』(菅直人著)、『証言 細野豪志「原発危機500日」の真実に鳥越俊太郎が迫る』(細野豪志・鳥越俊太郎著)、『原発危機 官邸からの証言』(福山哲郎著)、『ヒーローを待っていても世界は変わらない』(湯浅誠著)、『官邸から見た原発事故の真実 これから始まる真の危機』(田坂広志著)、『証言 民主党政権』(薬師寺克行著)などがある。

 その多くは、やはり原発事故関連のものが多く、さまざまな分野について、より包括的に書かれているとはいい難い。そして、多くは議員・政治家の視点が強い。

 また、有識者や専門家が民主党政権の問題と課題を評価した本もいくつか出版されている。

 たとえば、『民主党政権 失敗の検証――日本政治は何を活かすか』(日本再建イニシアティブ著)、『政権交代と政党政治(歴史のなかの日本政治6)』(飯尾潤編)、『政権交代とは何だったのか』(山口二郎著)などがある。これらは比較的、包括的には書かれているが、多くは民主党政権の政策形成に関わった者の視点からは書かれていない。

 このように考えていくと、今回発行された報告書がいかに貴重な資料であるかがわかる。

 それでは、報告書の内容を具体的にみていこう。

 まず、「障害者政策」、「情報公開・公文書管理政策」、「気候変動・エネルギー政策」、「NPO・『新しい公共』政策」の4つの分野におけるNGO・NPOの政策形成過程への参加について検証している。

 執筆担当は、自身車いす生活を送り、障がい者インターナショナルナル(DPI)日本会議事務局長であると共に障がい者制度改革推進会議に委員としても参加した尾上浩二さん、情報公開クリアリングハウスの理事長で、内閣府行政透明化検討チーム構成員なども務めた三木由紀子さん、気候ネットワーク理事で、米ニューヨーク開催の国連気候変動サミットには非政府関係者としての唯一の日本人者招待者として参加した平田仁子さん、早稲田大学教授で「新しい公共」推進会議などでも委員として活躍した坪郷實さんだ。まさに民主党政権の政策形成にさまざまな形で関わった方々ばかりなのだ。

 次に、各政策ごとに、民主党政権の市民、NGO・NPOなどの政策形成への参加に関して、従来の政権との違いや新たな試みをみていこう。

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