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[3]立憲デモクラシーの会公開講演会 エスタブリッシュメントの激しい知的劣化という帰結

まとめ:WEBRONZA編集部

内田樹 神戸女学院大名誉教授(フランス現代思想)

 その鳩山さんの件ですが、国内に米軍基地、外国軍の基地があるのは望ましいことではない、ま、これは当たり前のことですよね。主権国家としては当然発言すべきことです。

 特に沖縄の場合は、面積の20%に日本国内の75%の米軍基地が集中しているという極めて異常な状態があるわけですから、これに対してはですね、何とか基地を縮小する、できれば、基地を全部撤去していただきたいということを要求するのは、当然のことなんですけれども、この発言をめぐって集中的なバッシングがありました。

外務省と防衛省がつくった退陣への流れ

 特に、外務省と防衛省は非常に厳しく首相の足を引っ張っていって、退陣を余儀なくさせるという流れをつくっていった。これに対して、直接アメリカが、鳩山というのはどうもアメリカにとって役に立たない人間だから落とすようにというような、内政干渉になるような指示をしたとはまったく思っておりません。

 しかしながら、「こんな首相がいると、アメリカが怒るのではないか、不機嫌になるのではないか」と、アメリカのご意向を忖度して鳩山下ろしに奔走した政治家や官僚がいた。メディアもそうでした。「鳩山はすぐに辞めた方がいいという報道が圧倒的に多かった。これは、日本人がアメリカの国益を最大化することがすなわち日本の国益を最大化することになるという、度し難い、シンプルな図式にはまり込んでしまった、知的頽廃のひとつの典型的なケースでなかったかと僕は思っています。

 これは素人考えなんですけれども、たぶん、これは全部、外務省と防衛省の現状維持のシステムに乗っかってきた官僚たちが、それが変更されることを嫌って、鳩山下ろしに走ったに違いないということをツイッターで書きました。そうしたら、鳩山由起夫首相がそれをリツイートしていた(会場笑い)。

 これについては、オリバーストーンが去年、広島に来て講演しました。これも日本のメディアはあまり報道しなかったんですけれども、その中で日本にはすばらしい文化があると語りました。映画も素晴らしいし、音楽も素晴らしいし、食文化も素晴らしい、でも、日本の政治には見るべきものが何もないと言ってました。

世界のために何も語らない日本の首相

 あなたがたは世界に多くのものをもたらしたけれども、過去の日本の歴代の総理大臣のなかで、世界のために何かを語った人は一人もいない。その時彼は「ドントスタンドエニシング、何一つ彼らは代表していなかった」ということを言ったんです。僕は、これはすごく強い言葉だと思います。アメリカのリベラル派の人たちの正直な見解だと思いますね。

 日本人はさまざまな良きことをしていますけど、国際社会に向けて発信するようなメッセージを何ももっていないというのは、アメリカ人のみならず、国際社会から見た時の、日本に対するある種の典型的な印象ではないかと思います。その時にポロっと、

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