まとめ:WEBRONZA編集部
2014年11月26日
ではいったい日本はどうやって主権回復への道を歩んでいったらいいのか。
対米従属戦略によって日本の国益が少しも増大しないにもかかわらず、それを採用しているという状況。それが40年間続いているわけです。そうすると、どういう風にみえるでしょうか。
ふつうは、交渉相手があれこれ言ってくる。あれこれと振る舞いをする。政策的な選択をする時に、自国の国益を増大しようと思っているのであれば、そこの判断には合理性があります。アメリカの国益と日本の国益の間にはいくつかの点で、利害が相反するところがあります。相反すれば、そこでぶつかって当然なんですけれども、そこの部分がぶつからなくなってきている。
そうすると、とりあえず、理解ができないわけです。日本を政治的に統治している人物たちが、自国の国益の増大に関心がないように見える。
たとえば、特定秘密保護法ですね。これは、要するに、民主国家である日本が、さまざまな国民に与えられている基本的な人権、主権をいくつか制約していくということですよね。
でも、この特定秘密保護法の制定を急いだ理由というのが、このような法律がなければ、アメリカの軍機がもれてしまうということでした。日米の共同的な軍事作戦に支障になる、ということをアメリカに向かって言ったわけです。アメリカの軍機を日本は守るという、言ってしまうと、国益においては末端的なことをするために、日本の国民の基本的人権の制約に踏み込んでいる。
つまり、日本の国民全体からすると、国民が利益を失っていくという、そのことの代償として、軍機の保全ということを言ったわけです。それもアメリカに言われてそうするんではなく、自ら進んで、です。アメリカからすると、「そうおっしゃっていただけるのはありがたいですけれども、いったいなんでそんなことを言ってくるんだろう」と、よく分からないと思いますね。
そもそも機密の漏洩というのはですね、もっとも厳しい漏洩事件というのは、防衛省関係機関のトップレベルからの漏洩なんです。ご存じの通り、イギリスのキム・フィルビー事件というのがありましたけれども、対ソ連の諜報部の部長だった、キム・フィルビーという人が実は戦後ずっとソ連のスパイであったわけですが、この人物の諜報行為によってイギリスとアメリカの対ソ連諜報、情報が全部ソ連に筒抜けだったのです。
これは、インテリジェンスのことを考える場合、一番典型的な例と言えます。その前にもプロフューモ事件というのがありましたけれども、これは大臣がピロートークでいろいろと漏らしてしまったという事件です。ただ、ピロートークで漏らせるような秘密とですね、諜報機関のトップからもれる秘密というのはクオリティーが違うわけです。
ですから、本当に真剣に諜報の問題、防諜の問題を考えるとすれば、どうやって国家の中枢に入り込んでしまったもぐら、つまりスパイが中枢から情報を漏洩していくのをどうやって防ぐかという話になるわけです。ところが、今回の特定秘密保護法というのは、そういう戦後の世界が経験した最悪のスパイのケースについて、まったくケーススタディしてないわけですね。キム・フィルビー事件のような情報漏洩事件をどうやって防ぐかということについては1秒も頭を使っていない。
権力の中枢から機密が漏洩する――。実はこれはもう、すでに日本では行われているんですよ、日常的に。どこに流れているか。もちろんアメリカに流れているんです。日本の権力の中枢にあって、
有料会員の方はログインページに進み、朝日新聞デジタルのIDとパスワードでログインしてください
一部の記事は有料会員以外の方もログインせずに全文を閲覧できます。
ご利用方法はアーカイブトップでご確認ください
朝日新聞デジタルの言論サイトRe:Ron(リロン)もご覧ください