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[5]私利私欲を追求する買弁たちが政策を立案

まとめ:WEBRONZA編集部

内田樹 神戸女学院大名誉教授(フランス現代思想)

 僕はいつも、「もし、自分が国務省の子役人だったら」という想定でもの考えるんです。

内田樹氏内田樹氏

 で、上の上司からですね、「内田君ちょっと、日本がこういうことやっているんだけど、何でこういうことするのか、合理的に説明できるか」と尋ねられたとします。

 「う~ん、国益の増大のためではないですね。かつての55年体制の時期の、沖縄返還までの対米従属路線であれば、明らかにそれによって結果的にアメリカからものを引き出すという、そういうことはあったんですけれど、それがよく見えません」。そう答えるしかないですね。さらに続けて言います。「彼らは、国益を求めているんじゃないんじゃないですか」

自分自身の出世のため

 僕がリポートをまとめるとすれば、いま日本で政策決定している人たちは、国益の増大のためにやっているんじゃなくて、その仕組みが安定的に固定化してしまったので、ドメスティックなヒエラルキーのなかで、プロモーション、つまり自分自身が出世するためにその仕組みを利用しているのではないか。そういう内容になると思います。

 つまり、国の資源、国土であったり、国民であったり、国家資源であったりという、国民の資源。我々にとって、日本がこれから100年200年続くためのストックとなるもの。この国民資源を商品化して市場に流していって、そこをアメリカの企業が食いたい放題にできるような仕組みをつくっていく。それによって、明らかに日本人全体としての国益は低減していくわけですけれど、それを一生懸命やろうとしている人間が、エスタブリッシュメント層のなかにこれだけいるということです。

 そして、その彼らのそういう行動を動機づけているのは何かといったら、私利私欲しかないわけですよ。それで、ようやく分かる。それだったら分かる。やはり合理的な根拠を求めたいですからね。

 何でこんな国益を損なう行動を進んで行うのか。それは彼ら自身が得をするからだ。少なくとも、ドメスティックな日本の議会制のなかでは、

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