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選挙の争点としての「対外関係」を読む

安倍首相の政治姿勢は選挙後に変容するのか、しないのか

櫻田淳 東洋学園大学教授

 此度の衆議院議員選挙に際して、最たる争点として語られるのが、「アベノミクス」の言葉で総称される安倍晋三内閣下の経済政策の評価である。

 しかし、本来、この機に問われるべきは、安倍晋三(内閣総理大臣)の政権運営全般への評価である。当然、そこには、集団的自衛権行使許容の是非を含めた外交・安全保障政策への評価も入る。

江田万里代表。右は新幹事長に内定した枝野幸男元官房長官民主党の海江田万里代表(左)と枝野幸男幹事長にとって、今度の選挙は「中間テスト」か? 
 民主党の「公約」で印象深いのは、「専守防衛に徹し、他国に脅威を与えるような軍事大国とならないとの基本理念を今後も堅持します。集団的自衛権の行使一般を容認する憲法の解釈変更は許しません」という記述であろう。

 これは、自民党の「公約」において、「(行使容認を趣旨とした)閣議決定に基づき、いかなる事態に対しても国民の命と平和な暮らしを守り抜くため、平時から切れ目のない対応を可能とする安全保障法制を速やかに整備します」と記されていることとは、明らかに対照的である。

 しかしながら、集団的自衛権行使許容を含めて、安倍が「積極的平和主義」の標語の下で展開してきた対外政策は、特に米豪印三ヵ国、さらにはEU(欧州連合)諸国やASEAN(東南アジア諸国連合)諸国の大勢が歓迎するところとなっている。こうした安倍内閣下の「業績」を先ず否定するかのような「公約」は、相当に危うい。

 無論、民主党の「公約」にも、「日米同盟をさらに深化させます。在日米軍再編に関する日米合意を着実に実施し、抑止力の維持を図りつつ、日米地位協定のあり方を含め、沖縄をはじめとする関係住民の負担軽減に全力をあげます」とある。

 ただし、この「日米同盟の深化」方針と「閣議決定の撤回」という政策対応とは、どのように整合するのか。また、民主党は、どのような根拠で、その「整合性」について米国政府を説得できると判断したのか。

 そうしたことは甚だ曖昧である。それは、在沖米軍普天間基地移設案件で鳩山由紀夫内閣が行った「ちゃぶ台返し」対応に相似た趣きを漂わせている。

 もっとも、安倍の政権運営に対する評価が、どのようなものであれ、此度の選挙がもはや

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