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 いつになく長い秋が終わり、一気に寒くなった韓国。待っていましたとばかり、周囲はキムチの話で盛り上がる。「キムジャン(キムチ漬け)した?」「キムチあげるよ」。在韓日本人にとっても、おすそ分けのキムチが嬉しい季節だ。

 人の暖かさに心がほっこりする季節、産経新聞の加藤達也前ソウル支局長の裁判が始まった。

ソウル中央地裁での初公判終了後、加藤達也・産経新聞前ソウル支局長を乗せた車を取り囲み、抗議する韓国人ら拡大初公判終了後、加藤達也・産経新聞前ソウル支局長を乗せた車を取り囲み、抗議する韓国人たち=2014年11月27日、ソウル中央地裁
 法廷は初日から荒れた。前支局長の車には生卵がぶつけられ、今度は加藤前支局長側が相手であるハンギョレ青年団を訴えることになった。

 「泥仕合。だから日韓は嫌……」という声が聞こえてくるが、「生卵」はあくまでも右翼団体のパフォーマンスであり、それをもって韓国国民全体にげっそりすることはない。

 少なくとも、これが「愛国的義挙」と賞賛される状況は、今の韓国では想像できない。

 日韓関係はよくないが、私達は極度の幻想や極端な偏見を持たず、普通につきあえばいいと思う。韓国人は面白い人が多いし、韓国は旅先としては手軽でいい。

 とはいえ、「つまりハンギョレ青年団とは日本の在特会(在日特権を許さない市民の会)と同じようなものですね」と言われると、そう言って切って捨てるのもな……、という気がする。韓国の事情はもうちょっと複雑だ。

加藤前支局長の車に生卵を投げた「ハンギョレ青年団」とは?

 「ハンギョレ青年団」は、10月に結成されたばかりの新しい右翼団体だという。韓国メディアの報道などによれば、団の共同代表は「大韓民国父母連合」事務総長のパク・ウァンソク氏(35)、脱北者出身の国会議員の秘書を務める北朝鮮人権運動家ジョン・ナム氏(41)、「ニューコリア女性連合」代表イ・ソヨン氏(41)の3名、つまりは新しい団体といっても、既存の右翼団体の連合体のようでもある。

 それを新たに「青年団」と命名したのは、より若い世代を意識してのことあろう。結団式で彼らが掲げた横断幕には、次のようなスローガンが書かれている。

 「実践する若者・行動する青年・自由統一・自由守護・北朝鮮の人権改善・北核廃棄」

 若者や青年の文字が見られるものの、それを持つ人々には年配者が多く、日本の「次世代の党」のような趣も感じる。「青年団」は今後の組織化の目標なのであろう。

 この「ハンギョレ青年団」が加藤前支局長の法廷に現れたということは、これまでの韓国の保守陣営の流れからはちょっと不思議な感じもする。

 団体のスローガンにもあるように、このタイプの保守団体の第一の敵は北朝鮮の現体制であり、活動の中心は北朝鮮の人権問題や核廃絶などにあった。それがいわゆる「反日」的な行動をするというのは、ある意味新しい動きである。

 「イルベと関係があるのかもしれないけど、まだはっきりしないね」

 この件に詳しい知り合いの記者もよくわからないといった風だ。「イルベ」とは韓国のネット右翼であり、

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筆者

伊東順子

伊東順子(いとう・じゅんこ) フリーライター・翻訳業

愛知県豊橋市生まれ。1990年に渡韓。著書に『もう日本を気にしなくなった韓国人』(洋泉社新書y)、『ピビンバの国の女性たち』(講談社文庫)等。

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