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モヒートを飲みながらキューバを語ろう(下)

明るい過去も未来も、暗い過去も未来も、何でも飛び出す

高成田享 仙台大学体育学部教授(スポーツメディア論)

 今回の米国とキューバとの国交正常化の動きをキューバ人は、ほぼ全員が歓迎していると思う。

 「生活物資がないのは米国の経済制裁のせいだ」と、キューバ政府が説明してきたこともあるが、キューバのなかで豊かな生活をしている人々はドルが手に入る人々であることを知っているからだ。

 米国に亡命した親類がいる人は、彼らがそっと送ってくれるドル札で救われ、ホテルなどの観光施設で働く人々は、外国人がくれるチップで潤っていた。

 こうした人々のなかに、観光客相手に道路に立つ街娼がいるのは悲しいことで、ミニスカートの少女が道路に立っていたので、「少女は何をしているのか」と、取材協力者に尋ねたら、「学校から帰宅する生徒で、知人が車で送ってくれるのを待っているのだ」と答えた。

 外国のメディアが「街娼」を報道するたびに、取り締まりが強化され、彼女たちの生活が困難になるのを知っているため、苦しい説明をしたのだろう。

ハバナ聖堂前の広場で拡大ハバナ聖堂前の広場で
 米国のキューバに対する経済制裁が緩和されることで、すぐに活気が出てくるのは観光業だろう。

 観光はキューバ最大の産業で、年間200万人を超える観光客が訪れている。

 カナダ、英国、イタリア、スペインなどが10万人を超える観光客を送り出しているが、渡航が禁止されている米国からも6万人を超える数が入国している。

 キューバに入国時の通関はパスポートにスタンプを押さず、別の入国許可証を渡す。だから、米国人は、キューバからメキシコなどに戻ったときに、この紙を捨ててしまえば、キューバに行った証拠は残らない、というわけだ。

 米国にキューバ土産を持ち込むことは外国人といえども禁止され、没収される。

 実際に土産を没収された日本人からそう聞いたので、キューバからメキシコ経由でフロリダに入国する際、チェ・ゲバラの観光Tシャツは衣類の奥に隠したが、ラム酒や葉巻はバッグの中の見えるところに置いて、

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筆者

高成田享

高成田享(たかなりた・とおる) 仙台大学体育学部教授(スポーツメディア論)

1948年、岡山市生まれ。71年に朝日新聞社に入り、経済部記者、アメリカ総局長、論説委員などを経て、2008年から石巻支局長。この間、テレビ朝日系「ニュースステーション」キャスターも経験。2011年2月に退職し、仙台大学教授。東日本大震災後、復興構想会議の委員を務める。主な著書に『ディズニーランドの経済学』(共著、朝日文庫)、『こちら石巻 さかな記者奮闘記――アメリカ総局長の定年チェンジ』(時事通信出版局)、『さかな記者が見た大震災 石巻讃歌』(講談社)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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