アベノミクスは「危険ドラッグ」、県内全選挙区で自民党を拒否した沖縄に注目すべきだ
2014年12月30日
52・66%で戦後最低。12月14日の衆議院選挙の投票率である。有権者の2人に1人しか投票所に足を運ばなかった。私は東京郊外の小学校で投票したが、閑散としていて、市の職員たちは珍客が来たとばかりに深々とお辞儀をしてくれた。
700億円。それが選挙費用である。その半分の国税が無駄になった、とも考えられる。安倍晋三首相があと2年の任期を残しながら、いきなり国会を解散したのは、権力強化のため、野党のスキをつく奇襲攻撃。まるで73年前の1941年12月8日、真珠湾攻撃にならったのかのようだ。
選挙前は、経済政策を争点とする「アベノミクス」解散などと曖昧(あいまい)なことを言っていたが、安倍首相は14日夜、自民党の候補が勝ち進む開票結果を見ながら、テレビ中継で、「憲法改正は自民党にとっての悲願。憲法改正への理解が高まるように努力したい」と言い切った。 衣(経済)の下からよろい(軍事)が透けて見えてきた。経済が良くなるとの触れ込みが「アベノミクス」だが、本人は祖父の岸信介・元首相、叔父の佐藤栄作・元首相、父親の安倍晋太郎・元外相ら親族の、「憲法改正」という「悲願」実現に使命感を燃やしている。
実は、自民党に投票した多くの国民は、生活の向上に期待しているのだ。厚生労働省の調査では、18歳未満の子どもの相対的貧困率は16・3%と過去最悪だ。
この層は進学をあきらめ、未来に絶望を感じている。日本は極端な学歴社会で、大卒でも就職がなく、労働人口のおよそ4割が非正規労働者。そのほとんどが、年収200万円以下の生活を強いられている。
円安、株高による格差の拡大は、「アベノミクス」の結果だ。しかし、自分の生活が苦しくなると、さらに「アベノミクス」に期待せざるを得ない、いわば「危険ドラッグ」のようなものだ。
自民党の選挙公約には、憲法に反する「集団的自衛権の行使容認」という言葉もなかった。が、安倍首相は、開票途中ですでに、関連法案を「次の通常国会で成立させたい」と言明している。
世論調査では、国民の約60%が反対している原発再稼働も、この「奇襲」の勝利を背景に強行しようとしている。いまや「勝てば官軍」。与党が3分の2議席を確保し、さらに横暴が強まりそうだ。連立政権の公明党への投票は、多分に暴走する自民党のブレーキ役としての期待でもあるが、「タカタ」のエアバッグのように役に立たないばかりか、危険な存在にならないか。
そんななか、沖縄の動きは注目すべきだ。先月の県知事選挙に続いて、全選挙区で自民党を拒否した。平和運動にとっての希望だ。
ある大学での講演のあと、東南アジアからきている留学生に真顔で、「日本人は政治に関心がなく、政治を変えようと行動も起こさない。本当に民主主義国家ですか」と問われた。その問いをいま反芻(はんすう)している。
◇
※本論考はAJWフォーラムより転載しています
有料会員の方はログインページに進み、朝日新聞デジタルのIDとパスワードでログインしてください
一部の記事は有料会員以外の方もログインせずに全文を閲覧できます。
ご利用方法はアーカイブトップでご確認ください
朝日新聞デジタルの言論サイトRe:Ron(リロン)もご覧ください