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[1]テロとの戦い、日本人は人を殺しにいくのか

イスラム国に対しても始まったデーモナイゼーションと報復の連鎖

伊勢崎賢治 東京外国語大学大学院教授

 「紛争屋」を自称する東京外国語大学大学院教授の伊勢崎賢治さんが昨秋、「日本人は人を殺しに行くのか 戦場からの集団的自衛権入門」(朝日新書)を出しました。この1月15日には、「本当の戦争の話をしよう 世界の「対立」を仕切る」(朝日出版社)も出したばかりです。今日の戦争について積極的に問題提起を続ける伊勢崎さんのトークセッションでのお話を連載のかたちでお届けします。

 WEBRONZAのトークセッションは2014年11月5日、東京・神田神保町の東京堂ホールで行われました。

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拡大「テロとの戦争は未来永劫続く」と語る伊勢崎賢治氏

集団的自衛権とテロとの戦い

 集団的自衛権とは何でしょうか。その起源から今日までそれがどう変遷してきたのか、については、本日は時間の都合で詳しくはお話しできませんが、簡単に申しますと、集団的自衛権、コレクティブ・ディフェンス、これが初めて国際法のターミノロジーとして出てきたのが国連憲章第51条で、そんなに新しいものではありません。

 その後、国連憲章は部分的に改定されましたけど、一番重要な、例えば、国連憲章第6章、第7章、第8章というのは、当初から全然変わっていません。一方、世界情勢はどんどん変わっていく。冷戦が始まり、そして終わり、「内戦」の時代が始まり、今は「テロとの戦い」という訳の分からないものが頻発しています。

 こういう情勢の変化に合わせながら、これらの国連憲章は「運用」で対応してきたわけです。そんななか、日本での議論はちょっと特別です。集団的自衛権の議論は、あくまで、憲法9条との絡み。9条が変わろうが否かが、国際情勢には大して影響はないのですが、思想的な右と左がドメスティックなケンカをしている間に、世界に取り残されてしまった…。そんな感じを受けるんですね。

 その辺をご理解いただくために、今日は主に国際情勢の話をいたします。日本が集団的自衛権の行使を考えるうえで、現在、最も大きく、そして、これからもずっと続くであろう、最大の集団的自衛権の行使である、「テロとの戦い」です。それを話します。これがどういうふうに起きたか、今どうなっているか、これからどうなるのか。そのためにこれから日本は、我々日本人はどういう用意をしなければいけないのかということをお話しいたします。

 今日お集まりの皆さんは、いわゆる護憲派、リベラルな部類に属する方々とお見受けしますが、初めに断っておきますと、僕は自衛隊の教師役をこの7年間ぐらいやっています。それも普通の隊員向けではありません。目黒に統合幕僚幹部学校というのがありまして、そこの陸海空の精鋭たちを毎年2回教えております。7年間やっていますので、たぶん自衛隊の幹部で僕を知らない人はいないはずです。そういう立場にあるということをご認識ください。

善悪の話ではない

 では、始めましょう。まず、集団的自衛は悪なのでしょうか。これは悪とか善とかいう話ではありません。なぜか。我々が加盟し批准している国連憲章では、個別的自衛権と集団的自衛権というのは固有の権利と認識されているからです。概念上の話ですが、何か突発的な武力衝突が発生し、それを受けて国連安全保障理事会が国連的措置として何か行動を起こすまでの間、自衛をせよ、と。概念上ですが、両自衛権の行使と国連的措置の間には、タイムラグがあるわけです。国連の決議を待っていたらやられちゃうかもしれないから、それまでやっていいよということです。

 この国連的措置をどういうわけか日本では集団安全保障と訳していて、これは、誤解を生みやすいです。なぜかというと、集団的自衛権の集団はどちらかというと仲間、ご近所であります。一方、集団安全保障の集団というのは、国連としての措置、つまり、全世界のことを言っているわけです。それに、集団安全保障の方は権利ではなくて措置です。

 同じ集団という言葉ですが、国連が言うんだったら嫌とは言えないだろう、というような雰囲気のなか、 ・・・ログインして読む
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筆者

伊勢崎賢治

伊勢崎賢治(いせざき・けんじ) 東京外国語大学大学院教授

東京外国語大学大学院「平和構築・紛争予防講座」担当教授。1957年東京都生まれ。早稲田大学大学院理工学研究科修士課程修了。国際NGOでスラムの住民運動を組織した後、アフリカで開発援助に携わる。国連PKO上級幹部として東ティモール、シエラレオネの日本政府特別代表としてアフガニスタンの武装解除を指揮。著書に『武装解除――紛争屋が見た世界』(講談社現代新書)、『紛争屋の外交論 ニッポンの出口戦略』(NHK出版新書)など多数。