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[3]「イスラム国」の出現は当然の帰結だ

アメリカ・NATOの軍事的な敗走、ホスト・ネーションづくりの失敗の果てに

伊勢崎賢治 東京外国語大学大学院教授

 現在のアフガニスタンの戦況をみると、地上で一番堅固なカブールのNATO本部にもテロ犯が侵入してきます。テロ行為の脅威は、アフガン全土を覆っています。いわゆる通常戦は、パキスタンとの国境周辺に展開しています。

パキスタンのタリバン支援

拡大熱心に聴き入る人たち。メモをとる姿も=東京・神田神保町の東京堂ホール

 相手はタリバンだけではありません。世界的なネットワークのあるアルカイダとつながりのあるものが、パキスタン国内に活動しています。インドへの地政学上の対抗心から、アフガニスタンに常に親パキスタンの政権をつくることを国是にしてきたパキスタン。当時のタリバン政権の樹立を、軍備を含めて支援しました。対テロ戦では、アメリカに協力してこれらを追い詰める立場にありますが、このように微妙なのが、この国パキスタンの複雑怪奇なところです。

 このパキスタンを通じて、海外から義勇兵が参集します。イスラム教徒で移民としてヨーロッパに渡り、成功した家庭。お父さんが苦学の末、努力して医者や弁護士として成功し大金持ち。その子供たちは何の不自由もない。英語しか話せない。母国の言葉はほとんどしゃべれない。それがどういうわけか、ある日インターネットでアルカイダのホームページを見て覚醒してしまう。家族も身分も捨て、ムジャヒディンとして渡航してしまう。これが一般的な形でした。今は、非イスラム教徒でも行ってしまうという恐ろしい時代になりました。

 こういう連中の他に、現場のアメリカ・NATO軍が敵として捉えているものがもう一つあります。それが、通称GOLIAG(Government Linked Illegal Armed Group)、政府系不法武装集団とでも訳しましょうか、があります。

”内なる敵”をつくってしまった

 僕らに武装解除された軍閥、もしくは司令官らは、軍のランクを剥奪され、一般人に戻されました。しかし、一般人に戻されたからといって彼らの力が弱まるわけではありません。もともと彼らはその土地、土地の庄屋さんみたいな家系の息子で、金持ちなわけです。力を持っている。でも重火器を取り上げました。こういう戦争兵器をつかって戦争はできません。でも小火器は入ってくる。部下たちは、全員、武装・動員解除しましたが、地方での人間のしがらみは続きます。

 これが政府系不法武装集団となっているのです。こういうところで民主選挙をやると、みんなしがらみで投票しますから、そういうリーダーたちが当選してしまう。そいつらが、今、政府なのです。彼らは、悪いことをやりたい放題です。なぜなら、発覚したら、タリバンのせいにすればいいのですから。麻薬取引は、もちろん、テロリスト組織の重要な資金源であることは間違いありません。ですが、こういう“政府系”のやつらもやっているのです。

 つまり“内なる敵”をつくってしまったのです。ホスト・ネーションづくりが失敗しているというのは、これです。だから勝てないのです。

ホスト・ネーションづくりのジレンマ

 僕の半生は、国際援助専門家としての活動です。そのなかで、いわゆる破綻国家をたくさん見てきました。アフガニスタンほど、国際支援を受けた国はないでしょう。これだけ支援して、内政に介入して、なぜここまで腐敗するのか分からない。アメリカ・NATOが抱える、ホスト・ネーションづくりのジレンマです。

 オバマ政権は、前任者が始めた間違えた二つの戦争を終焉させるとことを公約に誕生しました。2009年のこと。この時すでに、開戦から8年目です。アメリカ国民の厭戦感は、ピークに達していたと思います。だから、期待もした。

 ところが、オバマさんが就任後、初めて取ったアフガン戦略というのは、その期待と逆でした。米兵の増派です。でも、僕がオバマさんでも、たぶん同じことをしたと思います。なぜなら、

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筆者

伊勢崎賢治

伊勢崎賢治(いせざき・けんじ) 東京外国語大学大学院教授

東京外国語大学大学院「平和構築・紛争予防講座」担当教授。1957年東京都生まれ。早稲田大学大学院理工学研究科修士課程修了。国際NGOでスラムの住民運動を組織した後、アフリカで開発援助に携わる。国連PKO上級幹部として東ティモール、シエラレオネの日本政府特別代表としてアフガニスタンの武装解除を指揮。著書に『武装解除――紛争屋が見た世界』(講談社現代新書)、『紛争屋の外交論 ニッポンの出口戦略』(NHK出版新書)など多数。

※プロフィールは、論座に執筆した当時のものです