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所沢・住民投票は「民主主義」の貴重な経験

活動のプロセスこそが重要だ

鈴木崇弘 城西国際大学客員教授(政治学)

 埼玉県所沢市で、航空自衛隊入間基地の近隣の小中学校におけるエアコン設置をめぐる住民投票が、去る2月15日に行われた。

 結果は、投票率31.54%、賛成(56,921票、投票数64.86%)が、反対(30,047票、投票数34.24%)を上回り、過半数を占めた(なお、当日の有権者数は、27万8,248人)。

 この住民投票の経緯は、次のとおりである。

「学校にエアコンを」。駅前でチラシを配る賛成側住民=5日夕、西武線小手指駅学校へのエアコン設置を訴えて駅前でチラシを配る賛成側住民=西武線小手指駅
 所沢市は、2006年に、国の補助事業としてエアコン整備計画(小中で29校)を決定した。そして、入間基地に最も近い1校に設置された。

 さらに、近隣の2校分も予算化され、2012年度に設置工事がされる予定であった。

 ところが、2011年10月に初当選した現在の藤本正人市長が、同年の震災に伴って起きた原発事故などを受けて、「便利で快適な生活を見直すべきだ」と工事計画を撤回した。

 これに対して、設置が中止された中学校の保護者らが中心となり、他の28校での設置を問う住民投票の条例を市長に直接請求し、同条例案が2014年12月に市議会で可決され、それを受けて今回の住民投票が行われたのである。

 住民投票とは、「地方公共団体の住民が、特定の事項について、投票により直接に意思表示すること。憲法95条に基づき地方自治特別法(1つの地方公共団体のみに適用する特別法)の制定の可否を問う住民投票、地方議会の解散要求や議員・首長の解職要求などの直接請求を受けて賛否を問う住民投票、条例に基づく住民投票の3つがある。一般に住民投票といえば、条例による住民投票を指す。条例上の住民投票は、他の2つの住民投票と異なり、投票結果に法的拘束力はなく、政治的拘束力にとどまる」ものである(コトバンク)。

 所沢市の住民投票もまさに条例に基づくものであり、その結果に、法的拘束力はない。しかも所沢市の条例では、賛否いずれかが投票者数の過半数を占め、かつ有権者総数の3分の1に達した場合には、市長および市議会はその結果の重みを斟酌しなければならないと定めている。

藤本正人市長は駅前で自らエアコン設置反対を訴えている。「政争の具に利用されたくない」として写真撮影は拒否した=6日早朝、西武線新所沢駅藤本正人市長は駅前でエアコン設置反対を訴えた=西武線新所沢駅
 つまり、今回の住民投票は、設置賛成者が投票者の過半数(約3分の2に迫る勢い)は超えたが、投票者の総数自体が有権者総数の3分の1にも達しておらず、市長および市議会は、その結果を斟酌する必要がないことを意味する。

 市長は、住民投票の結果を受けて、2月16日に記者会見を行った。そして「結果は重く受け止めるが、財政配分も考慮しながら、任期中(2015年10月29日まで)に慎重に判断したい」と主張し、判断を先送りした格好になっており、この対応は条例上は問題ないといえる。

 ただ市長は、自己の任期と絡めて、在任中はエアコン設置は認めない算段のようだ。つまり、今任期中は認めず、来る選挙で勝てばエアコン設置を中止し、もし敗れればその後は自分以外の市長が対応するだけと考えているようだ。

 しかしながら、その結論や住民投票の結果以上に、

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