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ハンガリー訪問とプーチン東方外交の虚実(下)

したたかなハンガリー、経済的に譲歩するロシア

大野正美 朝日新聞記者(報道局夕刊企画班)

(承前) 逆に目立ったのが、あえてプーチン氏を迎えることでハンガリーが得た経済上の実利である。

 たとえばハンガリーがロシアから輸入している天然ガスは、1996年の契約で年間90億立法メートルを購入することになっている。だが、契約ではこれより実際に使った量が少なくても、約束したガス量の85%分にあたる代金を支払わなければならない。

 しかし、2010年あたりからハンガリーの使うガス量が大幅に減った結果、同国が使っていなくても支払う必要のある代金が30億ユーロに達してしまった。これにプーチン氏は会談で、30億ユーロをすぐに支払う必要はなく、使われなかったガスをハンガリー国内で貯蔵し、今後使われるごとに同国が段階的に支払っていくという救済策をとることを認めたのだ。

 また、ソ連時代にハンガリーにできた原子力発電所4基に、ロシアがさらに2基新設する計画を進めることも再確認した。これも100億ユーロの建設費の80%をロシアが融資する。計画が実現すると、新たに1万人分の雇用が生じるという。

 一方、会談でオルバン首相は、黒海からトルコ、バルカン半島を通ってハンガリーなど中東欧の国々までを結ぶロシアの天然ガス・パイプライン構想に支持を表明した。

 2014年12月にプーチン氏がEUからの妨害を理由に中止を表明した黒海から中東欧を結ぶ「サウスストリーム」計画に代わるものだが、ロシア・メディアは「西側にもEUと別の立場を取る国が現れた」とオルバン氏の決定を歓迎している。

 とはいえ新しいパイプライン構想も、採算性などから実現性を疑問視する向きは多い。

 また、仮にこの構想が実現される場合、EU圏を通る部分の建設費はEUに負担させる方針をロシアは表向き取っている。だが、会談でプーチン氏は、ハンガリーについては何らかの形で建設費に支援措置をとる意向をオルバン氏に伝えたとの観測がロシア・メディアに出ている。つまり、オルバン氏は構想を支持しても得こそあれ、損は絶対にしないというそろばんを冷静にはじいているわけだ。

 経済協力に積極的だが、あくまで利益が第一で、政治・外交面でEUから批判の言質を与えないよう慎重に行動する。表面的にはマッチョ・タイプであっても微妙なバランスの舵取りを忘れないという点で、オルバン氏は小国特有のしたたかな指導者の一人ということができよう。

 プーチン氏との会談後、オルバン氏は2月20日付のコメルサント紙でインタビューに答えている。その内容が面白い。 ・・・ログインして読む
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筆者

大野正美

大野正美(おおの・まさみ) 朝日新聞記者(報道局夕刊企画班)

1980年、朝日新聞社入社。水戸支局、外報部、東京社会部などを経て、1986年からサンクトペテルブルクに留学、モスクワ支局勤務は3回計11年。論説委員、編集委員、国際報道部・機動特派員を経て、現在は報道局夕刊企画班。著書に『メドベージェフ――ロシア第三代大統領の実像』『グルジア戦争とは何だったか』(いずれもユーラシア・ブックレット、東洋書店)など。

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