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 コスタリカの国会は、日本と比べると格段に人間的だ。

 日本の国会では議員の席が半円形になって議長席に向いているが、コスタリカの国会は長方形ですべての議員が向き合う。いかにも言論、討論の府という配置だ。

 日本では議員が簡単に欠席するが、コスタリカではそうはいかない。「欠席した時間の分は給料から差し引かれます。わが国の議員は実によく仕事をしています」とルイス広報官は話す。

 議員の席からほんの2メートルしか離れていないガラスの向こう側は、市民の傍聴席だ。

国会の議場のガラスの向こうは市民の傍聴席だ。たたいたため、あちこちひびが入
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拡大国会の議場のガラスの向こうは市民の傍聴席。たたいたため、あちこちにひびが入っている=撮影・筆者
 日本では傍聴席にプラカードなどの持ち込みは禁止されているが、コスタリカはプラカードでも横断幕でもなんでも持ち込み自由だ。傍聴する市民はときどきガラスにプラカードを押し付けて、議員にプレッシャーをかける。

 議場の討論の内容はマイクで傍聴席に聞こえる。ガラスを通して議員の様子を間近に見る。議員の発言に怒った市民がガラスを強くたたいたため、あちこちにひびが入っている。

 国会は一院制で定数は57だ。うち女性議員が19人いる。3人に一人は女性だ。

 日本と比べれば女性の割合がかなり多いが、「残念ながら目標値には達していません」とルイスさん。

 コスタリカでは「選挙で選出されるポストの40%は女性でなくてはならない」という法律がある。

 女性の社会進出を進めるため、一定の割合を女性にするというクォータ制を採用している。男女平等を憲法で掲げるからには実際にそうなるよう法的に整備していこうとする姿勢がある。

 日本の選挙は小選挙区制と比例区の併用だが、コスタリカは完全比例代表制だ。

 選挙のさい、各政党はあらかじめ候補者のリストを出す。有権者は個人でなく政党に投票する。

 選挙は4年に一度で連続再選はできない。いったん議員になれば、次の4年は立候補できない。「連続して8年議員をすれば、権力にしがみつきたくなるものです。その可能性を摘もうと考えました」とルイスさん。権力者を生み出さないようにしたのだ。一方でせっかくの経験が失われてしまうという議論もある。

 大統領の場合は、以前は完全に再選禁止だった。一度大統領になれば二度となれなかった。独裁者をつくらないという発想からだ。これは若手の政治家に対する人権侵害だという違憲訴訟が元大統領から出た結果、今は再選ができるようになった。ただし間に8年を置かなければならない。

 国民の政治に対する関心は強く、投票率も以前は高かった。1998年の大統領選挙では82%だ。しかし、以後はしだいに落ち込み、2014年の選挙では69%だ。政治家の汚職などのため政治への信頼が失墜してきているという。

幼稚園児も参加する模擬投票

 日本で選挙権を現在の20歳から18歳に引き下げようという議論があるが、コスタリカはすでに18歳だ。

模擬投票をする子どもたち=2002年2月の撮影拡大模擬投票をする子どもたち=2002年2月、撮影・筆者
 ただし、若者の政治への関心度がかなり違う。コスタリカでは大統領選挙のたびに子どもの模擬投票が行われ、小学生はもちろん幼稚園児も参加する。小さいころから政治への参加を体験するのだ。

 2002年の大統領選挙のときに、その模様を見た。 ・・・ログインして読む
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筆者

伊藤千尋

伊藤千尋(いとう・ちひろ) フリー・ジャーナリスト

1949年、山口県生まれ、東大法学部卒。学生時代にキューバでサトウキビ刈り国際ボランティア、東大「ジプシー」調査探検隊長として東欧を現地調査。74年、朝日新聞に入社し長崎支局、東京本社外報部など経てサンパウロ支局長(中南米特派員)、バルセロナ支局長(欧州特派員)、ロサンゼルス支局長(米州特派員)を歴任、be編集部を最後に2014年9月、退職しフリー・ジャーナリストに。NGO「コスタリカ平和の会」共同代表。著書に『地球を活かすー市民が創る自然エネルギー』『活憲の時代』『変革の時代』『ゲバラの夢、熱き中南米』(以上、シネフロント社)、『一人の声が世界を変えた』『辺境を旅ゆけば日本が見えた』(以上、新日本出版社)、『世界一周 元気な市民力』(大月書店)、『反米大陸』(集英社新書)、『観光コースでないベトナム』(高文研)、『闘う新聞ーハンギョレの12年』(岩波ブックレット)、『燃える中南米』(岩波新書)など。

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