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韓国で「姦通罪」はなぜ廃止になったか(下)

「先進国」たらんとした法曹界

伊東順子 フリーライター・翻訳業

姦通罪は女性保護の法律だったか?

 1988年、韓国に憲法裁判所ができて以来、刑法第241条「姦通罪」に対して5回の違憲審判請求が行われ、4回までは「合憲」の審判が下されていた。

 その度に、メディアはこの件を大きく取り扱っており、20年余りの間に国民的議論は十分に行われてきたといえる。

韓国・憲法裁判所の大法廷拡大韓国・憲法裁判所の大法廷
 これまで、姦通罪の存続を支持してきた人々は、この法律が「浮気や不倫の抑止力になっている」「女性保護の法律だ」と主張し、違憲だとする側の「個人のプライバシーや性的自己決定権に国家権力は介入すべきではない」という意見と対立してきた。

 ただ、前者の主張に対しては、女性団体の中からも疑問の声は出ていた。

 まず姦通罪が浮気防止に使えないといわれた理由は、第一にその立件の難しさだった。

 文字通り姦通の現場を押さえなければならないわけで、もっとも有効なのは現行犯。つまり警察官を引き連れて、現場に踏み込むという方法だった。

 写真や録音なども有効ではあったが、文字通り(じゃないな)、姦通罪は「貫通」していないと罪にはならない。

 つまり、一緒に歩いているとか、ご飯食べているだけじゃだめで、まさにホテルに一緒に入る瞬間の写真など、かなり具体的な状況証拠でないと使えなかった。姦通罪で訴えられたある大学教授が「俺はヤッてない。証拠はこれだ」と、愛人を医者に連れて行って、処女膜検査までしたこともあった。

 またこの法律は親告罪であり、警察が勝手には逮捕できる種類のものではない。つまり、夫か妻からの告訴があって、初めて罪が成り立つ。しかも「離婚」が条件となるため、別れるつもりはないけど、ちょっと懲らしめてやりたい、というのはダメなのだ。

 したがって、経済的に夫に依存している妻にしてみれば、夫を警察につきだしたところで、刑務所に入れられてしまえば、子供の養育費だって貰えない。さらに世間体だって、悪いわけだ。

 逆に、妻の浮気は一発レッドカードの可能性もあった。あるいは夫に愛人がいて、妻と慰謝料なしで別れたいとき、「仕掛ける」こともできた。過去にはこういう事例もよくあった

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筆者

伊東順子

伊東順子(いとう・じゅんこ) フリーライター・翻訳業

愛知県豊橋市生まれ。1990年に渡韓。著書に『韓国 現地からの報告――セウォル号事件から文在寅政権まで』(ちくま新書)、『もう日本を気にしなくなった韓国人』(洋泉社新書y)、『ピビンバの国の女性たち』(講談社文庫)等。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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