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 コスタリカの首都サンホセから北東へ。カリブ海に面してウミガメの産卵で世界的に名高いトルトゥゲーロ国立公園を目指した。

 車で3時間走ると川に行き当たる。3年前に来たときは、この近くの道沿いの樹にナマケモノがぶら下がっていた。

 今回は大雨のためか、姿が見えない。ここからボートに乗って1時間半。エコツアー専門のロッジに入った。中庭の木の枝にアカメアマガエルがしがみついてひょうきんな表情を向ける。

3年前に訪れたさい、路上の木にぶら下がっていたナモケモノ拡大2012年に訪れたさい、路上の木にぶら下がっていたナモケモノ=撮影・筆者
ひょうきんな表情のアカメアマガエル拡大ひょうきんな表情のアカメアマガエル=撮影・筆者

 翌朝、ボートで川を遡ると、沿岸の樹の枝にイグアナがいた。頭上高くサルが鳴く。低木を飛び回るのは「世界で最も美しい蝶」と言われるモルフォ蝶だ。水面近く川面でワニが目だけを出してこちらを見つめる。水面に突き出た瀬には白い鳥が一列になって羽根を休めている。

木の枝には保護色になったイグアナがいた拡大木の枝には保護色になったイグアナがいた=撮影・筆者
世界一美しいと言われるモルフォ蝶拡大世界一美しいと言われるモルフォ蝶=撮影・筆者

 コスタリカは環境保護の先進国だ。「エコツアー発祥の地」と言われ、海外から毎年200万人を超すエコツーリズムの客がやって来る。

 北海道とほぼ同じくらいの狭い国土に、地球上の全生物種の6%に当たる50万種以上の生物がすむ。中でも蝶類は10%で、全アフリカ大陸にすむ蝶の種類を合わせた数よりも多い。国土のほぼ4分の1の24%が国立公園や自然保護区に指定され、太平洋上のココ島は映画「ジュラシックパーク」のモデルとなった。

 環境への取り組みは早く、1969年に森林伐採認可の規制と森林局の創設を定めた最初の森林関連法を制定した。1993年には野生生物基本法が制定され、94年には環境エネルギー省が創設された。95年には環境基本法、96年に木の伐採に細かい条件をつけた森林法、さらにこれらを統合してあらゆる生物の保全を目指す生物多様性法が制定された。

 94年には憲法を改正して環境権を取り入れた。憲法第50条の「福祉、生産と富の最適な配分の権利」に加えて「すべて国民は健康で生態的に均衡のとれた環境に対する権利を持つ」と明記したのだ。

 エコツーリズムを私が最初に体験したのは2003年だった。

 首都サンホセからバスに乗り、熱帯雲霧林(うんむりん)と呼ばれる雲と霧に包まれた森に入って1時間。エコロッジが見えた。滝のようなスコールの中を両手に荷物を持って走り出すと、ホテルのフロントに立っていた白髪のおじいさんが見かねたのか雨の中を走って来て、私の荷物を一つ持っていっしょに走ってくれた。

 チェックインして部屋が決まったが、100メートル離れた山小屋まで歩かなければならない。傍らにいた白髪のおばあさんが私に傘をさしかけ、ずっと付き添ってくれた。

 翌朝、雨が上がって清々しいので散歩した。ロッジの前を若い従業員が竹箒で掃除している。彼と立ち話してわかったのは、前夜、雨の中で私の荷物を持ってくれたおじいさんが元大統領で、私に傘をさしかけてくれたのが元大統領夫人ということだ。

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筆者

伊藤千尋

伊藤千尋(いとう・ちひろ) フリー・ジャーナリスト

1949年、山口県生まれ、東大法学部卒。学生時代にキューバでサトウキビ刈り国際ボランティア、東大「ジプシー」調査探検隊長として東欧を現地調査。74年、朝日新聞に入社し長崎支局、東京本社外報部など経てサンパウロ支局長(中南米特派員)、バルセロナ支局長(欧州特派員)、ロサンゼルス支局長(米州特派員)を歴任、be編集部を最後に2014年9月、退職しフリー・ジャーナリストに。NGO「コスタリカ平和の会」共同代表。著書に『地球を活かすー市民が創る自然エネルギー』『活憲の時代』『変革の時代』『ゲバラの夢、熱き中南米』(以上、シネフロント社)、『一人の声が世界を変えた』『辺境を旅ゆけば日本が見えた』(以上、新日本出版社)、『世界一周 元気な市民力』(大月書店)、『反米大陸』(集英社新書)、『観光コースでないベトナム』(高文研)、『闘う新聞ーハンギョレの12年』(岩波ブックレット)、『燃える中南米』(岩波新書)など。

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