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 コスタリカの主な産業はコーヒーやバナナなどの農業だ。首都北東の標高1300メートルの傾斜地に広がるコーヒー農園を訪ねた。

 110年の歴史を持ち、今の農園主オノブレさんが4代目だ。この農園の高度、気温、雨量、火山灰の土などすべてがコーヒー生産に向いているという。日本にも豆を輸出している。

コーヒー農園で作業する人たちの向こうに虹が出た拡大コーヒー農園で作業する人たちの向こうに虹が出た=撮影・筆者
 ビニールで覆われた乾燥場のコンクリートの床には、摘んで間もない湿ったままのコーヒー豆が積もっている。

 外では乾燥した豆を隣国ニカラグアからの季節労働者が選別していた。コーヒー1袋69キロ分を6人が1日かけて、大きさや重さで選り分ける。

 ふと見ると、彼らが作業する背景の山の上に大きな虹がかかっていた。

 コスタリカでのコーヒー栽培の歴史は古い。1840年代には英国に輸出し、このため中米地域で最も豊かな国になった。コーヒーを港に運ぶために鉄道が敷かれ、その沿線でバナナを栽培したためバナナの生産も盛んになった。

 1897年には首都サンホセにオペラ劇場が建てられ、今は国立劇場となって天井画にはコーヒーやバナナの収穫風景が描かれている。

 豊かさを背景に1848年に独立したさい、初代大統領は「無関心、無教育こそ悪の根源だ」と教育に力を入れた。日本より早く1871年の憲法で義務教育を定め、1877年には死刑を廃止した。

 こうした流れが、途上国には珍しく社会保障が充実し医療費も教育費も無料にした今日の堅実な社会につながっている。

 2014年11月に移民情報を扱う英国のサイトが、地球幸福度指数でランク付けした世界151の国の幸福度を発表した。そこで世界一だったのがコスタリカだ。地球幸福度とは、その国が国民にどの程度の幸せを提供できるかをランク付けしたもので、地球環境との共存を重視する中で寿命や国民自身の幸福感などから割り出したという。

 今回の旅でエコツアーしたときのガイドは日本人の青年だった。日本で知り合ったコスタリカ女性と結婚してコスタリカに住んでいる。

 彼は自分から「この国に住んで幸せだ」と言い出した。「家族の間で人権について話し合うほどの人権先進国だし、病気になっても心配ないし、障害者があちこちで働く温かい社会だし。子どもの体調がよくないと職場で言えばすぐに早引けさせてくれる」と理由を挙げる。

 そう語ったあと突然、彼はエコツアーのバスの運転手に「あなたは幸せですか」とたずねた。 ・・・ログインして読む
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筆者

伊藤千尋

伊藤千尋(いとう・ちひろ) フリー・ジャーナリスト

1949年、山口県生まれ、東大法学部卒。学生時代にキューバでサトウキビ刈り国際ボランティア、東大「ジプシー」調査探検隊長として東欧を現地調査。74年、朝日新聞に入社し長崎支局、東京本社外報部など経てサンパウロ支局長(中南米特派員)、バルセロナ支局長(欧州特派員)、ロサンゼルス支局長(米州特派員)を歴任、be編集部を最後に2014年9月、退職しフリー・ジャーナリストに。NGO「コスタリカ平和の会」共同代表。著書に『地球を活かすー市民が創る自然エネルギー』『活憲の時代』『変革の時代』『ゲバラの夢、熱き中南米』(以上、シネフロント社)、『一人の声が世界を変えた』『辺境を旅ゆけば日本が見えた』(以上、新日本出版社)、『世界一周 元気な市民力』(大月書店)、『反米大陸』(集英社新書)、『観光コースでないベトナム』(高文研)、『闘う新聞ーハンギョレの12年』(岩波ブックレット)、『燃える中南米』(岩波新書)など。

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