革命後に噴き出した矛盾
2015年03月24日
カルタゴの遺跡など世界的な観光国チュニジアの首都チュニスの博物館で、イスラム過激派によるとみられるテロ襲撃があり、日本人3人を含む外国人観光客20人とチュニジア人の計23人が殺害された。
チュニジアは2011年の「アラブの春」という民主化の動きで強権体制が倒れた中東の国の中で、2014年秋、議会選挙と大統領選挙によって世俗派勢力とイスラム穏健派勢力による連立政権ができ、民主化が進んでいる国だった。
テロは基幹産業である観光に打撃を与えるものであり、途上にある民主的な国造りへの大きな危機となりかねない。
このテロ事件を読み解くカギは、治安当局が発表した、現場で殺害された実行犯2人の身元と、その背景にある。
一人はアルジェリア国境に接するカスリーン県出身の若者で、もう一人は首都チュニスの貧しい地域に住む若者である。
「カスリーン県」というキーワードで、アラビア語のインターネットで検索すれば、治安部隊が「テロ容疑者の自宅を急襲した」という動きがいくつも出てくる。
カスリーン県にある同国最高峰のシャンビ山の周辺は、「戦闘的サラフィー主義者」の拠点とされている。カスリーン県だけでなく、東隣のシディブジド、同国中部のカイロワン県などでも報告されている。
「戦闘的サラフィー主義」とは、イスラム法の厳格な実施を求め、そのために武装闘争としての「ジハード(聖戦)」を実施する過激派のことだ。アルカイダやシリアとイラクに広がる「イスラム国」(IS)も、「戦闘的サラフィー主義」の組織である。
チュニスのマグリブ紙によると、2011年のジャスミン革命後、イスラム過激派によるテロは今回のバルドー博物館までに29件あり、約90人が殺害された。今回の事件をのぞいては、犠牲者のほとんどが治安部隊や警官だったという。カスリーン県では2014年5月に当時の内相の家が過激派に襲撃され、4人の治安部隊員が死んだという。
外国メディアでは報道されないが、チュニジアでは
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