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日中、「戦後70年」と「戦勝70周年」の距離

「抗日戦争の記憶」が消えない理由

藤原秀人 朝日新聞記者(国際報道部)

 今年は日本が敗戦から70年。中国は抗日戦争勝利70周年だ。

 安倍晋三首相が出す談話が、アジア諸国に対する植民地支配と侵略への反省、おわびを表明した1995年の村山富市首相談話をどう継承するのか内外で注目されている。なかでも、安倍首相の歴史認識について注視している中国が、様々な機会をとらえて日本側を牽制(けんせい)しているという見方が日本では根強い。

 その中国に2014年12月に続いて3月にも行ってきたが、抗日戦争勝利70周年を記念する書物が書店に並んでいるわけではなく、メディアもほとんど取り上げていない。嵐の前の静けさなのかどうか分からないが、いまは日本側が自意識過剰のようだ。

 そんななか日中韓外相会談が3年ぶりにソウルで開かれた。この枠組みは2007年に始まったが、尖閣諸島の国有化に中国が反発したことなどで中断していた。それが、14年秋の日中首脳会談実現により、日中韓の様々な交流、対話が再起動し、外相会談も復活した。

 アジアの主要国の日中韓が安全保障だけでなく、貿易、環境などの分野で協力し、地域の安定と発展の道を探る、というのが外相会談の目的だが、会談後の共同報道発表文では、「歴史を直視し、未来に向かう」との文言が盛り込まれた。

中国の王毅外相拡大中国の王毅外相
 この文言が入ったことを高く評価した中国の王毅外相は3カ国外相会談だけでなく、日中会談でも時間をかけて歴史問題を提起した。

 「日本側は中日関係が近年困難に遭遇している原因を真剣に考え、歴史問題を直視し、適切に処理して、両国関係を全面的に正常化するための環境を整えるべきだ。今年は世界の反ファシズム戦争勝利70周年にあたり、中国人民の抗日戦争勝利70周年にもあたる。人々の視線が歴史にあてられることは避けられない。日本側がどのような姿勢で過去のあの侵略戦争に対処するのかは、中日関係の政治的基盤にかかわっており、日本と隣国との今後の関係に直接的影響を与える。日本がチャンスをとらえ、歴史を直視し、歴史的重荷をおろし、隣国と共に未来を切り開くことを望んでいる」

 中国国営新華社通信によれば、王氏は岸田文雄外相にそう語った。

 公開された写真では王氏に笑みはない。王氏は日本大使を務めたことがあり、会談に同席した邱国洪・駐韓大使と孔鉉佑アジア局長も日本公使などを歴任した日本専門家だ。

 3人とも日本語が堪能で、日本側とは幅広いつきあいをしてきた。本来なら少しは和やかであってもいいはずの会談だったが、歴史、とりわけ「抗日戦争」がからむとそうはいかない。

 だが、日本側には中国はいつまでも歴史問題に固執するのか、という見方が少なくない。

 朝日新聞の社説は王氏について「歴史問題の発言に長時間を費やしたと伝えられるが、その執着ぶりは、関係進展のためというより、歴史を国際政治の具にしようとする不毛な意図が疑われる」とねっちり指摘した。

 王氏は3月8日に北京で内外記者会見に臨んだ。私の並びに座っていたNHK記者が日本メディアのなかでただ一人質問が認められた。

 抗日戦争70周年行事に安倍晋三首相を招くつもりか、今年中に日中首脳会談を開くつもりか、などと質問した後に ・・・ログインして読む
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筆者

藤原秀人

藤原秀人(ふじわら・ひでひと) 朝日新聞記者(国際報道部)

1980年、朝日新聞社入社。外報部員、香港特派員、北京特派員、論説委員などを経て、2004年から2008年まで中国総局長。その後、中国・アジア担当の編集委員、新潟総局長を経て、2014年9月より国際報道部。2000年から1年間、ハーバード大学国際問題研究所客員研究員。

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