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セウォル号事故から1年、韓国社会の苦悩(中)

激高と沈黙のはざまで

伊東順子 フリーライター・翻訳業

混乱の追悼集会

 事故からまる1年目の4月16日に続き、その週の土曜日18日の午後から行われた追悼集会でも、参加者と警察が激しく衝突した。

 遺族21名を含めた100名余りが連行され、さらに集会参加者と警察の双方に多くの負傷者も出た。警察車両まで破壊された警察は「断固対応する」と声を荒らげ、主催者側は25日に再度の集合を呼びかけた。

 「セウォル号惨事1周年後、ソウル都心で続いている集会・追悼行事に向かって、警察が事実上の'全面戦争‘を宣言した」(ハンギョレ新聞)
 「18日の集会を主催した4・16家族協議会の委員長は'24日と25日にも集会を行う‘と明言しており、週末の都心を舞台に今後も暴力デモを繰り返すことをすでに宣言している」(朝鮮日報)

セウォル号沈没事故から1年を迎え、事故現場に近い珍島(チンド)の彭木(ペンモク)港を訪問した朴槿恵大統領(中央)=16日セウォル号沈没事故から1年を迎え、事故現場に近い珍島(チンド)の彭木(ペンモク)港を訪問した朴槿恵大統領(中央)=2015年4月16日
 「全面戦争」とか「暴力デモ」とか、日刊紙はそれぞれの「政治的立場」を鮮明にしながら、まるで状況を煽っているかのようだ。

 この衝突の様子は日本でも報道されたのだろう。旅行関係で仕事をする人たちから早速メールが来た。

 「セウォル号関係大変ですよね。韓国旅行、大丈夫でしょうか?」

 「デモは一部のことで、ソウルはいつもと変わりませんよ。明洞はショッピング客であふれています」

 返信しながら、ずっと同じだなと思った。デモや集会、北朝鮮の軍事的挑発、そして反日感情。

 その度に「大丈夫ですか?」「大丈夫です」。まるでルーティンのように繰り返されてきた。

 外部からと現地の印象のずれは前回も書いた。

 それでも「日常生活では寡黙でも、追悼の場は違うのではないか」という質問も寄せられた。

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