露店で「憲法」を買う若い母親
2015年05月03日
憲法というと、日本では市民と縁遠いものと思われている。教科書に出てきたのをちらりと見た記憶がある、というくらいの感覚だ。
だが、世界は違う。普通の市民が何かあれば、憲法を持ち出す。いや、日常的に一般の国民が憲法を使っている国もある。
南米のベネズエラは、風景がイタリアのベニスに似ているから、というのでつけられた国名だ。首都カラカスを歩いていると、道端に露店が並んでいた。
石畳の道に人々が列をなして座り、せっけんやかみそりなどの日用品を売っている。
段ボールの上に本を20冊くらい並べて売っている。何の本だろうと、表紙を見て驚いた。憲法だ。
ベネズエラの憲法を記した小冊子を上製、並製、粗製の3種類、道端で売っている。上製といっても日本円にして300円ほどだ。粗製は50円くらい。
「憲法なんて、誰か買う人がいるのだろうか」と首をかしげた。
でも、売る人がいるからには買う人がいるはずだ。その場にじっと立って、買う人が来るまで待った。
間もなく、赤ん坊を抱いた若い母親がやってきて1冊、買った。
私は彼女に声をかけた。「そんなものを買って、どうするんですか」と。
彼女は「このバカヤロウが」という顔で私を見つめ、言った。
「憲法を知らないで、どうやって生きていけというの? 憲法を知らないで、どうやって闘えというの?」
驚いた私は、その意味を問うた。
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