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世界は憲法を使っている(上) ベネズエラ編

露店で「憲法」を買う若い母親

伊藤千尋 国際ジャーナリスト

 憲法というと、日本では市民と縁遠いものと思われている。教科書に出てきたのをちらりと見た記憶がある、というくらいの感覚だ。

 だが、世界は違う。普通の市民が何かあれば、憲法を持ち出す。いや、日常的に一般の国民が憲法を使っている国もある。

 南米のベネズエラは、風景がイタリアのベニスに似ているから、というのでつけられた国名だ。首都カラカスを歩いていると、道端に露店が並んでいた。

 石畳の道に人々が列をなして座り、せっけんやかみそりなどの日用品を売っている。

露店で売っていた憲法の小冊子拡大露店で売っていた憲法の小冊子(上製)
 その中に本屋さんがあった。

 段ボールの上に本を20冊くらい並べて売っている。何の本だろうと、表紙を見て驚いた。憲法だ。

 ベネズエラの憲法を記した小冊子を上製、並製、粗製の3種類、道端で売っている。上製といっても日本円にして300円ほどだ。粗製は50円くらい。

 「憲法なんて、誰か買う人がいるのだろうか」と首をかしげた。

 でも、売る人がいるからには買う人がいるはずだ。その場にじっと立って、買う人が来るまで待った。

 間もなく、赤ん坊を抱いた若い母親がやってきて1冊、買った。

 私は彼女に声をかけた。「そんなものを買って、どうするんですか」と。

 彼女は「このバカヤロウが」という顔で私を見つめ、言った。

 「憲法を知らないで、どうやって生きていけというの? 憲法を知らないで、どうやって闘えというの?」

 驚いた私は、その意味を問うた。

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筆者

伊藤千尋

伊藤千尋(いとう・ちひろ) 国際ジャーナリスト

1949年、山口県生まれ、東大法学部卒。学生時代にキューバでサトウキビ刈り国際ボランティア、東大「ジプシー」調査探検隊長として東欧を現地調査。74年、朝日新聞に入社し長崎支局、東京本社外報部など経てサンパウロ支局長(中南米特派員)、バルセロナ支局長(欧州特派員)、ロサンゼルス支局長(米州特派員)を歴任、be編集部を最後に2014年9月、退職しフリー・ジャーナリストに。NGO「コスタリカ平和の会」共同代表。主著に『凛凛チャップリン』『凛としたアジア』『凛とした小国』『9条を活かす日本―15%が社会を変える』(以上、新日本出版社)、『世界を変えた勇気―自由と抵抗51の物語』(あおぞら書房)、『13歳からのジャーナリスト』(かもがわ出版)、『地球を活かす―市民が創る自然エネルギー』(シネフロント社)、『反米大陸』(集英社新書)、『燃える中南米』(岩波新書)など。

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