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[3]広島の墓地に建つ「護憲」

伊藤千尋 国際ジャーナリスト

 広島市の郊外、山間の住宅地のひっそりとした墓地に、堂々とした黒御影石の石碑が建つ。

「護憲」と大きく書かれた碑「護憲」と大きく書かれた碑=撮影・筆者
 表には20センチ四方の大きな文字で黒く「護憲」と書かれ、しかも何があっても文字が消えることのないようにという意志を示すかのように、4センチも深く石に彫り込んである。

 後ろ側は日本国憲法9条の全文だ。

 自治体や団体による記念碑ではなく、個人が建てた「9条の碑」である。

 碑のそばには「栗原家」の墓石がそびえる。ここに眠る栗原貞子さんは、名高い「原爆詩人」だ。

 夫の唯一さんは社会党の県会議員だった。碑を建てたのは二人の長女の眞理子さんだ。今は眞理子さんも亡くなり、墓に入っている。

 貞子さんの代表作「生ましめんかな」は、原爆が落とされた日の壕の光景をうたった。

 負傷した被爆者たちがひしめく壕で、赤ん坊が生まれそうになった。「私が産ませましょう」と声をあげたのは、重傷を負った

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