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制度問題のみ語る「闇」 内田樹さん

「大阪都構想」住民投票でみえたもの

内田樹

 いわゆる「大阪都構想」と呼ばれる大阪市の解体構想についての住民投票が終わり、構想は否決された。数千票が動けば勝敗が逆転するほどの僅差(きんさ)だった。だから、この結果について「民意が決した」とか「当否の判定が下った」というふうな大仰なもの言いをすることは控えたいと思う。賛否いずれの有権者も「大阪の繁栄」と「非効率な機構の改善」と「行政サービスの向上」を願っていた点に違いはない。賛否を分けたのは、その目標を実現するためにどのような方法を採るのか、「急激な改革か、ゆるやかな改革か」という遅速の差であった。「独裁的、強権的」と批判された市長の政治姿勢も、賛成派には「効率的でスピードのある改革のためには必要な技術的迂回(うかい)」と見えたことだろう。だが、遅速の差は、まなじりを決して、政治生命をかけて戦うほどのことなのだろうか。そんなのは話し合えば済むことではないのか。この常識を誰も語らなかったことに私はむしろこの国を蝕(むしば)んでいる深い闇を見る。

 二重行政のロスが大きいと言われたが、府県と政令指定都市の間に権限の重複が発生するのはほとんど制度的必然である。そこを調整するのが「間に立つ人」の知恵の見せどころではないのか。戦後、五大都市から始まった政令指定都市がいまの日本には20ある。大阪市以外の19の都市は

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