メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

RSS

日韓国交正常化50周年に必要とされる覚悟(上)

「冷静な日本と感情的で反日の韓国」というラベリング

金恵京 日本大学危機管理学部准教授(国際法)

国交正常化50周年という好機

 1965年6月22日、日本と韓国が「日本国と大韓民国との間の基本関係に関する条約(日韓基本条約)」を署名してから6月でちょうど半世紀が経つ。

 対日批判の象徴として位置づけられることの多い朴槿恵大統領も、2014年8月15日の光復節(韓国の独立記念日)の式典で2015年が国交正常化50年に当たることにふれ、「未来志向的な友好協力関係に進まねばならない」との言葉を述べていたように、両国の関係者は2015年が持つ意味合いを重視し、関係の改善に期待をかけてきた。

日韓基本条約の調印式が首相官邸で行われた。関係公文を交換する椎名悦三郎外相(右)と韓国の李東元(イ・ドンウォン)外務部長官拡大1965年6月22日、首相官邸で開かれた日韓基本条約の調印式。関係公文を交換する椎名悦三郎外相(右)と韓国の李東元(イ・ドンウォン)外務部長官
 また、言論NPOと東アジア研究院による日韓共同世論調査によれば、両国民の約7割が悪化する国民感情に対して「望ましくない」や「問題だ」と回答しているように、現状をよしとする声は少ない(本稿における数値データは以下、言及のない限り同調査による)。

 そうした情勢を受けて、本年を関係改善の契機とすることは、研究者、交流指向の市民団体関係者、政治家等々、日韓の友好や交流に関わる多くの人の願いでもあった。

 そして、当事者たちは、現状に満足していない市民やメディアによって友好の空気が醸成されることを望んできたのである。

 しかし、現在、6月半ばを過ぎながらなかなか前向きな動きは見られず、ようやく韓国の尹炳世(ユン・ビョンセ)外相の来日が検討されている程度にとどまり、政府やメディアにおいて国交正常化50周年を利して、関係改善に向けようとする動きは少ない。

 というよりも、かえって関係を悪い方向へ向かわせようという動きすらあるのが現状である。

メディアにおける韓国への反発

 そうした状況が日韓で長期化してしまった背景に何があったのかと考えると、政府間(特に、首脳同士)の対立はもちろんのことながら、マスメディアにおける韓国への強硬な批判が影響していることは、多くの人が指摘するところである。

 ある意味、政治との相互作用によりメディアが関係悪化に拍車をかけている現状があったと言い換えることもできよう。

 私はしばしばテレビに出演する機会があり、韓国に対して否定的な立場をとる番組にも招かれてきた。その際には、時に一方的な批判の矢面に立つこともあったが、不条理と感じる気持ちを押し殺しつつも韓国の事情を説明し、中立的な姿勢をもって友好を推進する立場をとってきた。

 そうした番組出演後には心無いメッセージが届くことも少なくなかったものの、自分の中では国交正常化50周年を迎える時には両国関係は多少改善されるであろうし、今は否定的な放送を行っているマスメディアもそこに至っては、関係者が長年にわたって築いてきた両国の友好を後押しするのではないかとの期待をかけてきた。

 そのため、焼け石に水であるかのように感じられる自らの行為も、いつか来る時の役に立つはずとの希望をもって出演を続けてきたのである。

 しかし、前掲のように、現在に至っても、日韓関係は改善の傾向を見せてはいない。特に、それが目立ち、これまでの嫌韓を背景とした番組の表現手法が組み込まれていたのが、6月5日にフジテレビ系で放送された番組「池上彰緊急スペシャル! 知ってるようで知らない韓国のナゾ」であった。

 内容としては、池上氏の番組によく見られるように、彼が先生役で、生徒役のタレントに解説を行う形式がとられていた。

 具体的には、(1)韓国の過激な反応や政府関係者の対応が紹介され、韓国側の行動の背景等を解説しないVTRが流され、(2)タレントが感情的なコメントを発し、(3)池上氏がその発言を否定も肯定もせず、「反日」をキーワードにして韓国の事情を説明するパターンが繰り返されたのである。

 しかし、そうした表現手法にはそれぞれに大きな問題が存在している。 ・・・ログインして読む
(残り:約2712文字/本文:約4274文字)

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。
Journalismの記事も読めるのは全ジャンルパックだけ!


筆者

金恵京

金恵京(きむ・へぎょん) 日本大学危機管理学部准教授(国際法)

国際法学者。日本大学危機管理学部准教授、早稲田大学博士(国際関係学専攻)。1975年ソウル生まれ。幼い頃より日本への関心が強く、1996年に明治大学法学部入学。2000年に卒業後、早稲田大学大学院アジア太平洋研究科修士課程に入学、博士後期課程で国際法によるテロリズム規制を研究。2005年、アメリカに渡り、ローファームMorrison & Foester勤務を経て、ジョージ・ワシントン大学総合科学部専任講師、ハワイ大学東アジア学部客員教授を歴任。2012年より日本に戻り、明治大学法学部助教、日本大学総合科学研究所准教授を経て現在に至る。著書に、『テロ防止策の研究――国際法の現状及び将来への提言』(早稲田大学出版部、2011)、『涙と花札――韓流と日流のあいだで』(新潮社、2012)、『風に舞う一葉――身近な日韓友好のすすめ』(第三文明社、2015)、『柔らかな海峡――日本・韓国 和解への道』(集英社インターナショナル、2015)、最新刊に『無差別テロ――国際社会はどう対処すればよいか』(岩波書店、2016)。

金恵京の記事

もっと見る